「冗談よ。正直なところ、今の私には、小夏の幸せでしょ、あとあなたの健康と幸せ以外、願うことはない」
缶コーヒーを飲む志郎の動きが止まった。そして朋香を見ると聞いた。
「抱きしめていい?」
「は?ここでは嫌よ。あとで家でね」
くっついてくる志郎を朋香は押し返した。押し返されながら志郎は聞いた。
「あと、一つは?」
「そうだな。んー、強いて言うなら、小夏と三人で観覧車に乗りたい」
志郎はガバリと立ち上がり叫んだ。
「小夏、トランポリンは終わりだ。観覧車のるぞ、観覧車」
と小夏に駆け寄っていく。跳ねながら小夏はさらにはしゃぐ。
「観覧車―!」
志郎は慣れた感じで小夏を肩車した。
「小夏、赤い観覧車がいいー」
「ダメだ。今日は青いの乗るぞ、青いの」
「えー。赤いのがいいー」
じゃれ合う志郎と小夏を見ながら、朋香はふつふつと幸せを感じていた。