春香は翼の様子の代わりように驚いていた。少し休んでいた翼を心配していたのだが、その心配は無用だったようだ。翼は何かに自信が付いたように、積極的に他の友達に関わるようになった。常に春香としか会話しなかった翼が、他の子に思いを伝え始めたのだ。声を出したことなんてなかったのに、今では頑張って文字を書きながらコミュニケーションを取ろうとしている。周りもそんな翼に歩み寄り始めていることに、春香は嬉しく思った。
そして、作文を書く練習の時間。テーマは“一番の思い出”。翼は商店街での戦闘で夢がかなったことと、美南という16歳の友達ができたことを文章にして発表した。春香が読んでも笑う子はもういない。「すごいね」「かっこいいね」と言葉が翼に向けられた。翼は照れながら、2つ折りにして持っていた画用紙をみんなの前で広げた。そこには大きな文字で翼の夢が描いてあった。
「ぼくのあたらしいゆめは、みんなといっぱいおはなしできるようになることです」