思えば大学生のころ、自動販売機で発泡酒が出てこなかったからこそ、始まった偶然の出会いであった。仕事が決まらず、社会の一員にもなれず、世間の誰からも必要とされていないのではないかというほど落ち込んでいたい私は、高田酒店のセンセイと三田さんに支えられた。今もA市を訪れると、必ず高田酒店へ行く。店がある限り、私はあそこで夏はビールを、冬はワンカップを買って飲む。以前、私はセンセイのように同じ仕事をずっと続けるのは不思議で、退屈なのではとも思っていたが、今はそうは思わない。世の中は移り変わって、町は変わって人は移動するけど、センセイはずっと同じ高田酒店にいていろんな人たちを迎えてくれていたんだと思う。