その時わたしに軽く彼は会釈して、「えっ? オヤジの?」ってわたしのお腹をみて驚いたリアクションをした。開さんはその意味が分かったようで銀太さんの後ろ頭をぽんっとはたいた。「だよね。びっくりした」って銀太さんの言葉にみんな笑い出して「たまに顔見せたと思たら、しょうがねぇなぁお前は」って言いながら「小夏ちゃん、ほんとに絵にかいたみたいなバカ息子でしょ」って、みんなの笑いを誘っていた。「ぜんぜん」ってわたしは手をひらひらせていた。
「ところでオマエなんでここにいるの?」って開きさんが聞く。
「ほら、フェイスブックでみたのここのイベント、で懐かしくなってさ」って言った後、ふーんって腕を組んでもういちど銀太さんの頭をはたいた。
観覧車の中には笹の葉が飾ってあった。テーブルの上には短冊が置いてある。
そこには<だいすきな人に言えなかった言葉をしたためてみませんか>とチラシのキャッチフレーズが踊っていた。わたしは短冊を前に爽を想っていた。<さっききまったよ。わたしたちのこどもの名前、みらいちゃんだからね、憶えておいてね>そうしたためた。観覧車の車窓からはあの日みたいに電車の線路が、夜の光を放ちながら走ってゆくのがみえていた。