高橋さんは奥から持ってきたイタリア製の中折れ帽を渡した。
「いいねえ、かっこいいねえ、やっぱ本物は違うねえ。春良くんそれきみにプレゼントするよ」
「悪いですよそんな。これ高いでしょう」
「いいってことよ。ハットしてグッドのお礼もかねて俺からの婚約祝いってことで。そうだ、ちょっと春良くんグッドってやってみな」と高橋さんは親指を立てて見せた。
「こうですか」と春良も立てた。
「まさにハットしてグッドだぜ」
「そうですね、まさにハットしてグッドとなりました」
商店街の人たちの賑やかな声がする。それらが皆まるで自分のことを祝福しているよう春良の耳に聞こえた。