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『僕の中のピンク』藤井あやめ

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 伯父さんは勢いよく食べ始めた。

 知らなかったな、お母さん好きなんだ。
「いただきます。」
 一口食べた瞬間に、僕も母さんの好物のうどんが大好きになった。
 揚げは出汁を吸ってかなり重い。上手くつかめないので僕は半分箸で突き刺した。
 口の中がジュワっとスープでいっぱいになった。揚げの油が溶けてまろやかになっている。
 僕は母さんが食べている姿を想像しながら夢中で食べた。

 そろそろ出ようかという時「よお!トシちゃん。」と入り口にから呼ぶ声がした。
 伯父さんと同じくらいの男の人だった。
 お店のおばちゃんも加わり親しそうに挨拶してるかと思えば、「あれ、もしかして祐ちゃんじゃないの?」と突然僕の話題が始まる。
「はい。そうです。」どうして知ってるんだろう?
「祐ちゃん、おじさんの事覚えてるかな、覚えてないよね。」
 その人は、竹ちゃんと呼ばれていた。
 僕は必死に記憶の引き出しを探し出したが、見つからなかった。
 答えられずモジモジしていると、竹ちゃんはまた話し出す。
「ここの揚げ驚いただろう?真理ちゃん、座布団みたいだって大笑いしてたよな。今度一緒に来たらいいよ!」
 竹ちゃんはニコニコしながら、店の奥へと入っていった。
 僕は、隣に母さんがいないのに、母さんのが近くにいる気がした。

 再び商店街を歩き出す。
「今の人誰?」僕は、竹ちゃんについて聞いてみた。
 伯父さんは、わははっと笑うと「祐の友達だよ。」と答えた。
 なんの答えにもなっていない回答なのに、伯父さんは至って真面目だった。
 僕はあんなに年の離れた友達を持った覚えはない。
 自分の事を知ってる知らない大人が、ここ蒲田に結構いるという事実を僕は初めて知った。


3

 やっと駅が見えてきた。
 サンロードを抜けるだけでも、伯父さんは騒がしかった。
 僕たちは東急プラザへ進む。
 ビルの入り口から漏れてくる涼しい風が、汗ばんだ顔を撫でた。

 せっかくだからと、伯父さんが「かまたえん」に行ってみる事になった。
 東急プラザの屋上にある小さな施設だ。
 家族で伯父さんの家に遊びに行くと、わざわざ出掛けて遊びに行った。
 小さな観覧車があって、母さんと二人でよく乗ったけど、僕が「もういい。」と言ってからは来なくなった。

 エレベータで屋上へと上がる。

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