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『僕の中のピンク』藤井あやめ

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 トシ伯父さんは父さんよりも体が大きい。もっと言えば、目も鼻も口も大きい。
 のっしのっしと歩く姿は、街中でも目立つ。隣で歩く僕も、自然と一歩が大きくなる。
「祐、そこの店でうどんでも食べていくか。」
 ちょうど昼時。食欲をそそる鰹の香りが漂ってきた。
「うん!食べたい。」
 実のところ、僕はマックだったらいいなと思っていたけど、僕のお腹は断然こちらを求めていた。
 店は全体的に古びていて、入り口は磨りガラスが付いた木の引き戸だった。
 取手の部分は多くの人が何度も開け閉めをして、プラスチックのようにツヤツヤ輝いている。
 ガラガラガラっと、引き戸のガラスが派手な効果音を響かせる。

「どーも。」
「はーい。いらっしゃいませー。あぁ!トシちゃん。こっちどうぞー。」
 少し混んだ店内でもよく響くおばちゃんの声は、僕達を奥のテーブルに案内した。
 熊のような伯父さんの影にいた僕を見つけたのは席についてからだった。

「あら!祐ちゃんだね?大きくなったね、いらっしゃい。」
 僕は突然話しかけられドキドキしてしまった。
「祐ちゃんはますます目元が真理ちゃんそっくりになってきたよ。」
 こちらが答える間もなく、おばちゃんは僕の中にある母さんを見つけ出す。
「ご馳走さま!」
 引き戸を開けながらお客さんが出ていく。
「どうもね~!トシちゃんは?きつね?」
 言葉足らずな注文が、伯父さんとおばちゃんの親しさを感じた。
「祐もきつねでどうだ?揚げが分厚くてうまいぞ。」
「うん。じゃあ、それにする。」
「きつね2~!ゆっくりしてってね。」
 おばちゃんは、すぐに別のお客さんの注文をとりに行った。

 美味しい出汁の香りと、うどんをすする音、湯気の混じった空気。
 僕は何故かとても懐かしい気持ちになった。

「は~い、お待ちどうさま。熱いから気を付けて食べるんだよ。」
 僕達のきつねうどんは、すぐにやってきた。
 確かに揚げが大きい。座布団くらいある気がする。
「祐のお母さんの好物なんだよ。ここのきつねうどん。」
 伯父さんが割り箸を割りながら言った。
「いただきます!」

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