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『僕の中のピンク』藤井あやめ

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「お母さんも元気よ。本当によかったね。後でお父さんに電話してみましょうね。」
 叔母さんもニコニコしながら続けて言った。
 僕は、昨日の夜ベッドの上で聞いたあの泣き声を思い出す。
「うん、よかった!」僕は安心した。嬉しかった。
 でも、僕の明るい声とは裏腹に、心の中にピンク色のモヤが広がるのを感じた。

 とうとう僕は兄になったんだ。
 なってしまったんだ。

 伯父さんと伯母さんは先に済ませたようで、僕の分だけテーブルに並べられた。
 湯気のたったお味噌汁、鮭、サラダ、卵焼き、ご飯の横にはふりかけの瓶が置いてあった。
 昨日の夕飯を食べていなかった事に、僕のお腹は正直に反応する。
「いただきます。」ご飯を目の前にすると、ますますお腹が減ってきた。
 何もかも忘れ食事に夢中になっていても、うちとは少し味が違うお味噌汁に、あぁ、僕は今蒲田の家にいるんだ。と現実に引き戻されてしまう。
 僕は一言も喋らずに食べ続け、あっという間にお皿を空した。
 卵焼きは、ほんのり甘くて僕の好みだった。おかわりはどうかと聞かれたけど、もうお腹はいっぱいだった。

 気がつくと、さっきまでなかった小さめの向日葵が花瓶に飾られていた。
 さっき伯父さんが庭で切ってきたんだ。
 あの伯父さんがお花を飾るなんて意外だった。

 昼休みの時間を狙って、僕は父さんに電話をかけてみた。
 2コールで出た。
「祐か?昨日産まれたよ!小さくてな、口元が祐にそっくりなんだよ。母さんはまだ病院だけど、元気にしているよ。もうお兄ちゃんだな!そっちはどうだ?」
 父さんの嬉しそに跳ねる声が電波にのって蒲田に届く。
「こっちは今のところ順調。」
 本当は、早く迎えに来てほしいと言いたかったけど、カッコ悪い気がして言えなかった。

 電話を僕切った後、トシ伯父さんは叔母さんに買い物を頼まれ、僕も一緒に付いて行くことになった。
 僕達は商店街をぶらぶらと駅の方へ歩いて行く。
 大きなアーケードは真夏の日差しを柔らかくして、人々に届ける。
 カートを押しながら買い物をするおばあちゃん。何を食べようかと相談している学生達。
 色んな人が色んな事をしている。相変わらず賑やかな商店街だ。

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