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『僕の中のピンク』藤井あやめ

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 伯母さんもソファーに座り身を乗り出す。

 僕はアルバムを手に取りゆっくりとめくる。
 髪もサイズも違うけど、母さんだ。
 小学生くらいの伯父さんと、小さな母さんが一緒に砂遊びをしている。
 ページをめくると、喧嘩した後なのか二人とも泣いている。
 さらにページをめくる。
 二人がお祖父ちゃんと観覧車に乗っている写真があった。
 僕が今日乗った、あの観覧車だ。

 そうだ。伯父さんも妹がいるお兄ちゃんだった。
 一緒に遊んで、喧嘩もして。一緒に過ごしてきた兄弟だった。
 妹が困ったときは助けてやれる、頼れる兄貴。
 いつの間にか、僕もそんな風になりたいと強く思っていた。

 さらにページをめくる。
 お腹を大きくした母さんが、伯父さんと一緒に写っている。
 次の写真には、何となく見覚えがある人が僕を抱いている。
「あ、この人。」

 竹ちゃんだ。他にも、僕の知らない大人達が僕を抱っこしていたり、母さんと笑っている写真が次々と出てきた。
「ばあちゃんの家にいけば、山のように写真があるぞ。」
 伯父さんは笑いながら言った。

 僕が産まれる前から、僕を待っていてくれた人達が、ここにいる。
 伯父さんと母さんが過ごしていた街に、僕もいた。そして次はきっと妹も加わる。
 僕がこれから何処にいようとも、何処に住もうとも、きっとそれは変わらない。
 僕は、暖かい何かに包まれたような気がした。

 シャワーを浴び、ハル君のベッドで横になる。
 明日、父さんと直接母さんの病院へ行けることになった。
 まだ保育器に入れられているが、初めて妹に会う。

 僕はさっき見たアルバムの事を思い出した。
 伯父さんと母さんが二人で砂の山を作っていた写真。
 僕も妹と一緒にやりたいんだ。
 もう僕の心の中のモヤモヤは何処かに消えていた。
 そのかわり、ドキドキしていて眠れない。早く妹に会ってみたい。
 母さんの元気な姿を早くみたい。
 僕は全身に熱い血が流れるのを感じながら、必死に夢の中へ行こうと努力した。

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