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次の日は意外と早く訪れた。
昨日は、長い長い夜だと思っていたが、朝を迎えるとそれは遠い過去に感じる。
昼前に、父さんが車で来る事になった。
伯父さんは昨日と同じように、花瓶の水を代えていた。
大きな手で運ばれる花瓶は、実際よりも、もっと小さく見える。
新しく水を得た向日葵は、ぐんと姿勢よく、空を目指しているように見えた。
時計がちょうど12時を指した頃、父さんが迎えにやって来た。
僕は、伯父さんと叔母さんにお礼を言って助手席に乗り込む。
「夏休み中、ずっといたっていいんだぞ。」
伯父さんは笑いながら言った。
叔母さんは、僕に車中で食べられるようにとお弁当を用意してくれた。
父さんは何度もお礼を言いながら車に乗り込む。
膝の上に置いたお弁当の暖かい温もりが心地いい。
エンジンをかけ、ジャリジャリと砂を踏む音を出しながら車はゆっくりと進む。
僕は、伯父さん達が見えなくなるまで手を振った。
僕から出ていったモヤモヤは、もう遥か彼方へ行ってしまっただろうか。
僕は、母さんがこの街に残していった糸のようなものを見つけた気がする。
それは、僕の腕にも巻き付いていて、沢山の人と結ばれながら、守られながら、これから先の未来にも延びていく。
その糸には、これからもどんどん誰かと繋がっていくだろう。
駅前の踏み切りで、僕はふと伯父さんが摘んできた向日葵を思い出した。
「あのさ、お母さんと妹に花束あげたい。」
「それはいいな!どこか花屋に寄っていこう。」
僕はきっと、可愛く咲いたピンク色の花束を選ぶと思う。
そして、「また一緒に観覧車乗ろう。」と母さんに伝えよう。
今度は妹も一緒に。