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『妻よ、君がその手を離すまで』籐子

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 私は頭をあげると共に、さっと話題を切り替えた。
「…二人?」
 妻がきょとんとした顔で私を見る。
「…ん?二人だよ、美鈴と翔…」
「…あぁ!うん…そうね。すき焼きの準備があるんだった。あなた、布団出してといてくれる?」
「あぁ…うん」

 春の日差しは心地いい。
 娘と孫の布団を縁側に広げ、布団の横で私も日向ぼっこをした。

「ただいま~」
 美鈴の声だ。ゆっくり歩く妻の速度に合わせて、私は玄関に向かった。
 美鈴の隣で、自分の身長の半分ぐらいもある大きなリュックを背負った翔が、緊張しながら立っていた。
「翔、ひさしぶり。よく来たね」
 妻はそう言いながら翔の頭を撫でた。
「おばあちゃん、おじいちゃん、こんにちは」
 小学生になると、こんなにしっかりした挨拶ができるようになるのか。子供の成長は早いものだ。

 いつもは二人きりの茶の間も、すき焼き鍋を四人で囲むと少し窮屈に感じられる。
 私はこの『幸せな窮屈感』を味わった。
「翔、お肉いっぱい食べなさいよ」
「うん!」
 翔は緊張が解けてきたようで、妻の言葉に嬉しそうに答えながら、小さな口で大きな肉をほおばった。
 美鈴がネギを取ると、切れずに繋がったままのネギが続々と出てきた。
「も~、またじゃん。いっつもこうだよね、お母さんの切った野菜」
 美鈴はため息をついて、少し不機嫌そうに言った。
「うるさいわね~、そんな事でぶつぶつ言わなくてもいいでしょ」
 妻と娘は昔からそりが合わない。事あるごとにこうして口論になる。一人娘で甘やかしてしまったせいもあるが、二人は似たもの同士なのだ。
 プライドが高く、人の事には口出しをするのに、自分のやったことに口出しをされると、すぐに怒る。まさに『親子』だ。

 そんな事を考えていると、いつの間にかネギの話題から、餅を入れるタイミングの事でまた口論をしていた。私は翔が嬉しそうにお肉を食べる姿を微笑ましく見ながら、すき焼きを味わおうと、鍋に箸を入れた。
「ちょっと、お父さん!何ひとりですき焼き楽しもうとしてるのよ!」

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