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『この街に在るもの』公乃まつり

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店の外に出ると、いつもの通り、そのまま解散となった。二次会はない。田舎の早い終電に乗る人。奥さんに車で迎えにきてもらう人。
これまでの癖で、1次会では人の話を聞いて回ることに集中して食べたご飯の量が少ないせいか、まだお腹が少し空いている。どこかラーメン屋にでも寄ってから帰ろうかとした時だった。
「藤島くん、まだ、お腹いける?」
ゆっくりとした標準語で話しかけてきたのは、さきほど俺と三上課長の間に入った金橋部長だった。
「美味しいほたて料理を出してくれるお店があるんだ。どう?」


部長と二人、目の前にはほたて料理がこれでもかと盛られた定食。知識としては知っていたけれど、青森のホタテは想像以上に大きかった。普通ホタテと言うと親指と人差し指でオッケーマークを作ったくらいの大きさのような気がするが、出てきたホタテはこぶし一個分くらいの大きさがある。
当麻を連れてくるならここだな、と思った。まだ向こうから連絡はないけれど。
「なんだかんだ、楽しかっただろう、東京」
金橋部長はゆったりとした標準語で話しかけてきた。
「そう……かもしれないです。元々東北採用で、東北好きですけど、東京は東京で悪くなかったです」
「こっちより若者が多い分、楽しい仲間も増えるもんな」
「部長も昔、東京に?」
「昔ね。大学時代は東京で過ごしたんだ」
「そうだったんですか。どちらに住んでいたんですか?」
「住んでいたのは池上の辺りだったんだけどね。蒲田もよく行っていたよ」
金橋部長はそう言って、手にビンを持つフリをした。お酒を飲みに行っていた、ということだろうか。
「俺も蒲田でよく飲んでました。終電ギリギリまで、向こうの同期と」
「……あのお店って、まだ残ってるのかなあ。ほら、商店街に入る手前のところにある、赤提灯系統のお店……名前、何だったかなあ……」
記憶を辿る。正直、赤提灯系のお店はほとんどはいったことがなかった。けれども最後に当麻と入った店はそういう系統だったし、場所も商店街手前だ。
「違う店かもしれませんが、赤提灯系のお店はまだまだたくさん残ってましたよ。俺も同期と一緒に行きました」
「そうか、昔さ、最後に東京で友達と飲んでたのが、その辺りにあった居酒屋でさ。えらい大ケンカして店を出てきたんだよね」
大ケンカ、という単語を聞いて、啜っていたみそ汁が変なところに一瞬入った。俺は大いに咳き込んで、ざらっとした喉の感触を流し込むように、慌てて水を一気飲みした。
「おい、大丈夫か」

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