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『この街に在るもの』公乃まつり

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こうして田舎に来てみると、東京での毎日も悪くなかったように思える。自分とは違う考えを持つたくさんの同期達との会話は面白かったし、最先端の物にもたくさん触れられた。Googleホームを買ってみたから今度見に来いよって誘ってくれるやつ。卓球ブームの時は、卓球バーに行こうぜって誘ってきたやつ。ドローン飛ばしてみたいから、田舎にドライブ行こうぜって企画してくれるやつ。
あれ、これ、全部当麻だったかな。
とにかく、刺激に溢れていて、東京にいた頃は刺激がストレスに感じる時もあったけれど、それでも俺は、自分で思っている以上に東京を楽しんでいたのかもしれない。

一つ意外だったのは、青森の飲み会はそこそこ盛り上がるということだ。結構みんなしゃべる。ただし、分からない言語が半分に、分からない話題が半分。人間、言語だけで会話しているんじゃないってことがよく分かった。分からないから、適当に相槌を打つ。それは時にかなり曖昧で、俺は東京に続いて青森でも、静かで大人しいキャラを確立しつつあった。
「津軽さこなが半年が経ったばって、津軽はなんぼ?」
課長の三上さんが話しかけてきた。普段はもう少し標準語だが、酔うと完全に津軽弁になる。半年経ってどう? っていうことかな? という脳内予測を立てて返事をする。
「へ……っ?あ、まあ、慣れました」
「東京しり良い場所だべ!空気もめし、食べ物もめし、すんずがだし。あどゴキブリもいねしきゃ」
ゴキブリ、という言葉に再び当麻を思い出した。一度、同期の家に男同士で遊びに行ったとき、黒い奴は出没した。わいわいぎゃーぎゃー騒ぎながら、嫌だったし、できれば二度と会いたくはないけれど、あれで同期男の絆は確実に深まった。
懐かしい思い出がふと蘇って、思わず顔に笑みが浮かぶ。三上さんはそれを同意と受け取ったようだ。
「あんどごさ住む人の気持ちが私かきやね」
一度も住んだ事がない人に言われたくない言葉だったけれど、ここで課長の三上さんの気を悪くさせたくなかった。三上さんは青森市生まれ青森市育ち。一度もここから出た事がない。故に、青森を愛している。酒の席は無礼講とは言え、無駄に誰かと敵対する気はない。
「そうですねえ。ゴキブリとの戦いはもう懲り懲りですね」
「それぐきやいさしてお痒い。っていうかおめ、東京さ住んだ事がねだべ」
そう言って割ってきたのは部長の金橋さんだった。
三上さんより金橋さんの方が立場は上だけれど、年次は変わらない二人だ。一瞬俺を挟んで嫌な空気が流れたところで、タイミングよくお開きの声がかかった。

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