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『お弁当の隙間』黒藪千代

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「これうちのママがよく買ってくるんだ!甘くて美味しいんだよ」
「美紀、よかったらひとつ食べていいよ」
「やったぁ!いただきぃ~」
 美紀は嬉しそうにかぼちゃを摘むと大きな口を開けて放り込む。美紀の顔が一瞬でほころんで幸せそうに目を細めた。
 その日、部活を終えた私はいつも商店街の裏側から自宅へ入る玄関へと向かう道を横切って、商店街の中央へと向かった。
 商店街は夕方が一番混雑する。仕事帰りに夕飯の買い物をする沢山の主婦。
 お腹を空かせた学生が肉屋のメンチカツを頬張っていたり。人の声と雑踏が混ざって何とも賑やかだ。
 両側にズラリと並ぶお店。薬屋、写真館、不動産屋に本屋をさらりと横目で見て流しながら食べ物を扱っているお店だけを選んでその店先で商品を眺めて回った。
 八百屋の店の片隅に小さなお惣菜コーナーがある。ピーマンともやしのナムル、人参のレーズン和え、根菜のおかか煮。肉屋からは唐揚げやコロッケを揚げる香ばしい油の匂いが漂ってくる。見ると、透明なガラスケースの隅に大きく(お惣菜あります)と手書きで書かれた紙が貼ってあった。
 肉団子酢豚風とラベルの貼られた大きな皿の中に甘酢あんがたっぷりとかけられた肉団子が美味しそうに光っている。
 その隣には肉屋らしからぬフキの佃煮。そして(お弁当にはこっち!)と書かれた紙の前には衣が細かく薄い、あのコロッケとメンチカツがあった。
 商店街の中程まで進むとお茶屋が見えてきた。その隣は米屋。
 さすがにお惣菜は置いてないだろうと思ったけれど、他の店よりもはるかに沢山の人だかりが出来ていたので近づいた。
 お茶屋の店先におばさんが一人、テーブルの上に並べられたお惣菜を販売していた。(茶飯で巻いてます)と書かれた紙が。見ると海苔巻きのようだ。他にもお稲荷さんと、なんとあの大豆と雑魚の飴煮が小さなパック詰になって並べてあった。しかし、大勢の人だかりはみんな米屋のほうに視線が向いている。何人ものおばさん達の間を縫って前の方に進むとやっと店先が見えて聴き慣れた米屋のおじさんのダミ声とおばさんの高い声が聞こえてくる。やっと前列まで顔を覗かせて、思わず(えっ)と声が出そうになって口元を抑えた。
 物凄い数のお惣菜が、所狭しと数十種類!そのすべてが量り売りで狭い店先におじさん、おばさんの他に若いお姉さんの従業員が二人。忙しそうに活気のある声を張って接客をしていた。
「おう、わこちゃんお使いか?!」
 おじさんは学生服の私を見て、すぐに声をかけてくれた。
「えっ、いえ」しどろもどろになる私におじさんは、いっとき動きを止めてくれたけれど、すぐに他のお客さんに呼ばれ接客に戻った。

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