同じよ、私もあなたと同じなの。何が同じなのかわからないけれど、私を子ども扱いしないマミちゃんに向かって訴えるみたいに、宣言するみたいに、どうか伝われと、強く思いながら言っていた。だから、マミちゃんが私の心の中の言葉と同じことを言ったとき、驚いて、涙が出そうになった。
「すごい。同じよ、私もあなたと。麻糸の麻に美しいで、マミっていうの」
学校帰り、マミちゃんのいる本屋へ寄り道するのが日課になった。これまでは商店街を通らずに帰っていたけど、マミちゃんに会うために帰り道を変えた。友達からの誘いも断って、背中のランドセルをガサガサと揺らしながら、全力で走って本屋を目指した。
「たまには友達とも遊ばなきゃ。付き合いっていうのよ、そういうの」
マミちゃんは私のために店の奥から椅子を出してきて、いつもレモンティーを淹れてくれた。
「だって私は、マミちゃんと話してる方が楽しい」
レモンティーの入った空色のカップをいじりながら答えると、「そう?嬉しいな」マミちゃんはふにゃりと笑うのだった。
宇宙人の話は、もう何も話すことがないってくらい沢山したし、学校の話──名札を忘れたら黒板消し当番をやらされること、プールの授業の後の濡れた髪が嫌だけどみんな気にしていないこと、ダンゴ虫を飼うことが流行っていて、ロッカーの上には虫かごがずらりと並んでいること、生き物係の女子が持ってきた出目金がすぐに死んでしまったこと──も細かく話した。同じ話はお母さんにもしたけれど、マミちゃんの返事はお母さんのそれとは全く違った。
例えば名札忘れは、人間なんだから誰だって忘れることはあるって。黒板消しの罰は、二回以上忘れたらってことにするべきだって。間違うことのない完璧な人間なんていないんだから。
お母さんも先生も、私の知ってる大人はみんな、忘れ物と言えば自動的に断罪するばかりだったから、私はそれまで本気で、大人は忘れ物をしないんだと思っていた。マミちゃんが「誰だって忘れることはある」って言ったのを、だから密かに驚きながら聞いた。
「ダンゴ虫は煮干しを食べるって聞いたことあるけど本当なの?」
「濡れた髪って私も嫌い、だって傷みやすいし。なんでドライヤーを使ったらダメなんだろうね」
私の目を見て話すマミちゃんは、いつだって真剣だった。真剣に、思ったことを思ったまま口にしているのだ。それがわかりすぎるくらいにわかった。勉強のために、ダンゴ虫の観察日記をつけろだなんて間違っても言わなかったし、子どものくせに髪を気にするなんてと、そんなことも絶対に言わなかった。
「出目金はね、一度だけ餌をやり忘れたことがあったの。それが原因だってみんな噂してる」
床に届かない足をフラフラさせて言うと、「そうかな、本当に」マミちゃんは独り言のように呟いた。