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『最後の二人』坂下泰義

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「ん?」
「……どうする?」
「え? なにが?」
「いや……あれかな……私たちこれから……」
 そう言ってサキが鳥皮を口にする。ゆっくりと噛みしめている。飲み込んだ後の言葉を想像すると恐ろしくてたまらない。
「いらっしゃい」
 勢いよく扉が開き、年配の男の人が入ってきた。
「どうも」
「あら、那須さん。こんばんは」
 ポロシャツにハンチング帽という、休日の落語家みたいな恰好の那須さんと呼ばれる男の人は、
「失礼」
 と言いながら込み合ってきたカウンターの奥、私の隣に座った。
「お、厚揚げうまそうだね」
 と私たちの皿を見て話しかけてきた。
「あ……食べます?」
 と急に話しかけられて動揺した私はそんな事を言ってしまった。
「いやいや、そういうつもりじゃないよ」
 那須さんは、慣れた様子でお酒や料理を注文し、隣の常連さんと世間話を始めた。
 那須さんと常連さんの盛り上がりと反比例するように、私とサキはおとなしく、ただ淡々と焼鳥やもつ煮やポテトサラダを口に運んだ。
 やがて那須さんの隣の常連さんが帰った。「芋の水割りね」
とおかわりしたところで、
「ごめんね、さっき。なんか大事な話してた? 邪魔しちゃった?」
 と那須さんが話しかけてきた。隣であまりに静かな私たちを気遣ってくれていたようだ。
「いや、そういう訳じゃないんですけど……」
「そうかい。なら良かったんだけど」
「……行き詰ってるんです」
 そう言うと、サキはいつの間にか頼んでいたレモンサワーを飲み干した。
「どうしたの?」
 と驚く那須さんに向かって、サキと私たちは自分たちの現状を話した。メンバーが次々に辞めて二人になった事やファンが減っている事、それは悩みというより、愚痴に近かった。たぶん、那須さんがただのおじさんで、どうせなにもわからないだろうと思っていたから、こんな好き勝手に話せたのだろう。
 だけど、那須さんは意外と真剣に話を聞いてくれた。
「なるほど、アイドルってのも、ああ見えて大変なんだなあ……」
「私たちもう二十一なんで」
 とサキが言うと、那須さんは驚いた顔をした。
「まだ二十一でしょ」
「いや、だって周りはもう十代ばっかりですから。それにある程度売れてての二十一ならあれですけど、現状こんな感じなんで……」

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