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『街を見下ろす屋上で』柿沼雅美

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 いいね、と私たちが言うと、そうそれはいいの、と理香の熱が上がる。
「それはいいの、美味しいしいいの! でもね、聞いて、シェアするじゃない普通。店員さんも取り皿くれたから、そうだろうと思って、私のパスタを取り皿に入れたのね。そしたらさ、そいつ私にパスタくれないの」
 えーっと私たちが言うと理香が、ありえないくない? と言って笑った。笑いながら、その時の理香はずっと戸惑う表情をしてたのかもなと思う。
「こっちもいいよ、とか、少し食べる? とかもないの。で、黙って私の取ったパスタは食べるの」
 へぇ〜、と私たちは言う。
「それってさ、単にデート慣れしてないってこと?」
 そう言う里美に、そうかも、と私も言う。
「いやでもそれさ、もしかして、理香が、そっちも少しちょうだい?って言うところだったのかな?」
 みちるが言うと、理香が、えーっと声を上げる。
「そこまで言わなきゃなの!? っていうか逆にそれ言ったら、別に俺はなにも言ってないのにくれたらほしいみたいな女って思われそうでイヤじゃない?」
「えー、じゃあその人どんな意図だったんだろ?」
「逆に何も考えてないんじゃないの?くれたから食べるけどシェアするまでは意識が向かないみたいな」
「でもそれデートじゃなくてもアウトじゃない?」
「わかった!友達とごはんとかも全然ないタイプとか?」
「それはそれで残念な人じゃない?」
 勝手に色々憶測して、そうかもそうかも、と言い合う。
「でね、聞いてよ、まだあるの」
 まだあるの? と里美が笑い、私たちは聞く聞くーと前のめりになる。
「でね、もういいやと思って自分のだけ食べて。ちなみにデザートどうする?とかも無くて。じゃあ帰ろうかってなってさ、店員さん呼んでお会計ってなってさ、さすがに私も気遣って財布出すじゃん? そしたら何て言ったと思う? っていうか、そもそも会計問題どう思う? おごってもらうのが普通? それとも割り勘が普通?」
「え、どっちだろう。友達だったら普通に割り勘だけど…」
「だね。でもさすがにデートで割り勘はないんじゃない? 何回も会ってるわけだし」
「まぁそうすると男の人って大変だよねー」
 私が言うと、まぁたしかにそうだよねーと一旦話が落ち着きそうなところで、理香が続けた。
「まぁ最初だし、割り勘かなどうかなって思ってたの。そしたらさ、そいつ、ごちそうするなんて毛頭無かったみたいに、会計見て、じゃあ3で! って!」
 理香が変な顔をして指で3を突き出すので、私たちは笑った。

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