「ちょっと!恥ずかしいよ!」
解こうと、その手を掴んだ瞬間、叔母の細い手の感触が、あの日の私を、景色を、匂いさえも、再びここに連れ戻してくれた。
「ようこそ、蒲田へ」
世界から見放されたと思っていた幼い私が、必死に掴んだ手。あの時、あんなに大きく感じたのに、今では・・・・・・。
「何かあったら、私からすっ飛んでここに帰ってくるわよ。だから、大丈夫だから」
「うん、うん」
叔母さんの体が小刻みに震えていた。私も堪えきれなくなって、思わず空を見上げる。
「帰る場所がある、それだけで・・・・・・・ありがとう。ずっと変わらずにいてね」
首肯く様に、眩い日差しを浴びた観覧車の窓が、キラキラと光輝いていた。