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『mémoires』川瀬七貴

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 慌ててまた、下を向く。
「そっか、そっか!じゃあ、あれから3年近く経っているのか。またこうやって香澄ちゃんに会えて、本当に嬉しいよ」
(うれしい?何で?何でわたしなんかに会えてうれしいの?わたし、いらない子なんだよ)
「ね、ね、お昼食べた?って、げ、もう2時か!さすがに、もう食べているよね」
 言いながら叔母のお腹が大きく鳴る。
「いえ、まだ・・・です」
「は?!マジで!?もう、あのクソ兄貴、普通こんな時間ならご飯食べさせてから来るだろ!ごめんね、香澄ちゃん、お腹ペコペコじゃんね。そうだ、今から、駅前の東急でご飯食べない?ホットケーキと、めっちゃジューシーなソーセージが食べられるお店があってさ。香澄ちゃん、ホットケーキ好き?」
 うちの家で『拒否』というものは一切教えられていない。故に、私は何の感情も無く頷く。これしか返事の方法を知らないのだ。
「よし、決まり!ホットケーキとかってさ、絶対子供は好きだと思ったのよ。私も大好きだしね。あ、私、もういい歳だけど」
 がははは、と大きな口を開けて笑う。彼女は、今まで私が出逢った事の無いタイプの人間だった。
(この人、よくわからない)
 それが、叔母に対する正直な第一印象だった。

 

 知らない土地を歩くというのは、こんなにも違和感を覚えるものなのか。叔母と家を出た後、ずっと私は首を左右に動かし、眉を顰め歩いていた。 
「駅まで歩いて20分くらいだから。結構、うち便利な所にあるのよ」
 戸惑っている私に気付いてくれたのか、叔母がポンと背中を叩く。
「え・・・?」
 徒歩20分もかかるのに便利だと言う。名古屋では考えられない事だ。きっと、不便と言い間違えたのだろう、と当時の私は思っていた。
「今日は天気が良いから、お散歩がてらちょうど良いね」
 スキップでもしそうな足取りで叔母が歩く。
「そういえば、東京に来るのは初めて?」
「はい」
「そっかそっか。私、兄貴と疎遠だからさ。アイツがああいう感じでなければ、香澄ちゃんが休みの度に東京観光のアテンドを買って出るのに」
 ぷうっと頬を膨らませ、眉間にシワを寄せる。その姿は、子供の私よりも無邪気なものだった。

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