「ねえ、おばあちゃん? おばあちゃん!?」
返事はない。
ひゅーん、ぱん!
薄くなる翔子の体。
翔子は街を眺める。
ひゅーん、ぱん!
落ち着いて街を眺める。
ひゅーん、ぱん!
微笑を浮かべて街を眺め、姿を消す。
ひゅーん、ぱん!
両親がやって来て花火を見上げる。
ぱぱぱん、ぱんぱんぱんぱん、ぱぱぱん! 最後の花火が派手に弾ける。
それから一年が経った。
翔子の両親が屋上観覧車に向かってカメラを構えている。ゴンドラの中から我が子を抱いた翔子の妹が手を振っている。
仏壇に袋ごとカリントウを供え、線香を上げ、リンを鳴らし、手を合わせているのは、すっかり元気になった翔子だ。
遺影にはガタの写真が増えている。
遺影の隣には老眼鏡がチョコンと置かれている。
うちわを扇ぎながら冷蔵庫を開け、翔子はメガネをかける。