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               国際短編映画祭につながる「ショートフィルムの原案」公募・創作プロジェクト 奇想天外短編映画 BOOK SHORTS

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『藤色の、ラベンダー色の、空の、』園山真央

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「お店、まだあんまり分からないから、駅ビルでと思ってるんだけど良いかな? レストランフロアの、ケーキセットとか出してくれるお店に予約してるの。少しなら人数変更できると思うから、もし良ければ加奈子ちゃんも」
「ありがとう。行きたい」
 お店には七人集まった。連日、研修と飲み会で疲れているだろうから、今日は遅くならないようにしようと相談してお酒は飲まず、女子会らしく軽めのご飯とデザートを食べながら、これまでの研修の感想や、配属についてそれぞれが入手した噂話の交換をした。これまでに話す機会の無かった子とも仲良くなれたし、数週間のうちに積もった不安も話してみればなんのことは無い、みんな同じような気持ちであることが分かった。女の子ばかりの非公式な集まりは気楽でありがたく、いろいろと話したいことはまだあったが、またみんなでご飯を食べに来ようと約束して、当初の予定通り、遅くなり過ぎないうちに店を出た。レストランフロアはまだまだ営業時間だが、エスカレーターを一つ下った物販フロアにはそろそろ店じまいの雰囲気が漂っていた。
 エスカレーターにのんびり運ばれながら、少しずつ静かになっていくデパートの雰囲気を眺めていた加奈子だったが、ふと目の端に映った景色が気になって身を乗り出すように振り返った。真後ろにいた山崎さんが一度、加奈子の見ている方を振り返ってから、「どうしたの? 危ないよ?」と首を傾げた。
「ほら、気を付けて。もう終わるよ」
 加奈子は言われるがままエスカレーターを降りて、また次のエスカレーターに乗りかえる。それでも気になって上のフロアを見上げてしまう。
「どうしたの?」と山崎さんが再び首を傾げる。
「玩具売り場が…」
「玩具売り場? なにか欲しい物、売ってた?」
「うん…」
 同期達も不思議そうに加奈子の視線を追ってその玩具売り場を見ようとした。けれども見えるのは婦人服売り場のマネキンやポスターばかりだ。また次のエスカレーターに乗りかえて下りながら、「そういえば、」と山崎さんが言った。
「私、従兄が蒲田に住んでいて、小さいころ何度か遊びにきたことがあるのだけど、昔、玩具売り場に〈願い事をかなえる〉っていうぬいぐるみが売っていた気がするなぁ」
「願い事、叶えてくれるの?」と、同期の誰かが尋ねる。
「うん。なんだっけなぁ。ウサギとか、ネコとか、動物のぬいぐるみだったと思うのだけど。まだ売ってるのかな?」
「ごめん、私、ちょっと戻るね」
 そう言って加奈子は次のフロアでエスカレーターを飛び降りた。「先に帰ってて。ごめんね!」
 加奈子は驚いて目を丸くする山崎さんや同期たちと離れてぐるりとエスカレーターの反対側に回り、作業員が今にも止めようとしていた上りのエスカレーターを駆け上がる。息を切らすようにして2フロア上の玩具売り場に飛び込むと、閉店作業を進めていた店員が目を丸くした。
 ぐるりと辺りを見回す。

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