ディスプレイされていたブラジャーやパンティーに埋もれている餃子の神様を店員の女性たちは掘り返した。僕も掘り返すのを手伝おうとしたが、大丈夫です、と店員さんに断られてしまった。
発掘された餃子の神様は特に怪我をしていなかった。ただ足がふらふらするというので、僕が引き取って駅ビルの外まで歩かせた。
「家はどこなの」
僕が聞くと餃子の神様は困った顔をした。
「ない」
「ないの?」
「神様だからない」
「そういうのはいいから、本当のこと教えてよ」
「神様だから」
神様神様を繰り返す餃子の神様にらちがあかなくなり、とりあえず近くのカフェに餃子の神様を連れていって座らせた。餃子の神様は体を小さくして座っていた。
「こんなところ来たことない」
「チェーン店だよ」
ちんまりと座っている餃子の神様がおもしろく、僕は飲み物を買って餃子の神様に与えた。
「甘い!」餃子の神様は言う。「冷たい!」
「そういうフローズンドリンクがあるの最近は」
「詳しいな」
感心したように餃子の神様が言うので僕は照れて、
「普通です」
と返した。
餃子の神様は静かにフローズンドリンクをすすっている。餃子の神様は頭の毛がかなり薄く、ぽわぽわした毛未満のものが頭を覆っている。
「ねえ神様」
「なに? あっこれすごいくだものも入ってる」
「神様は本当に願いを叶えられるの?」
「叶えられるよ、うわーだからストローが太いのか、くだものを吸い上げられるようになってるんだ、すごい」
「願い叶えてくれる?」
「いいよ、何でも言いなよ」
「餃子の神様と餃子が食べたい」
「え?」
フローズンドリンクに夢中になっていた餃子の神様は顔を上げた。
「餃子食べにいこう」
「わし」餃子の神様は言う。「お金払わないよ」
「宣言するなよ」僕は笑った。「払わなくていいよ、おごるよ」
「ほんとに?」
「うん」
「ほんとに餃子一緒に食べてくれる?」
「うん、何回でも行こう」
「明日も? 明後日も?」
「それはちょっと多いわ」
「えー」