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『餃子の神様』井口可奈

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「餃子関係」
「餃子関係?」
「えー、じゃあ」
 僕が言いよどんでいると、
「その願い叶えよう」
 と餃子の神様は言った。えい、と餃子の神様がかけ声をかけると、店員が焼き餃子を五皿持ってやってきた。
「お、おおお、すごい」
「たらふく餃子を食べたいのだろう」
「そうです」
「わしの力わかった?」
「わかりました」
「じゃあわしちょっと急ぐから先に行くね」
「はい、どうもありがとうございました」
 餃子の神様は帰っていった。僕は五皿の餃子を苦しいくらいお腹いっぱいになりながら食べ、大ライスも完食した。これだけたくさんの餃子を頼むことは予算的にも気持ち的にもなかなかできなかったので、じいさんが本物の餃子の神様であるかはさておき、感謝の気持ちでいっぱいになった。
 店を出ようとしたとき、店員に止められて伝票を渡された。自分で頼んだが餃子の神様に食われた餃子の分にはじまり、最後の五皿まで合わせた金額が伝票に書かれていた。
 僕は粛々とそれを支払った。
 帰り道にある餃子の神様の石像全部に、餃子の神様なんて悪い目にあってしまえと願いながら帰った。石像はとにかくいっぱいあった。何メートルかおきに設置されているような状態で、餃子の神様が飽和していた。そんなに石像が置かれているのに、風景の邪魔になっていないのが不思議だった。雑多な街だからなにがあってもおかしくないということがひとつはあると思う。
 餃子の神様を祈りの対象として求めている人がかなりいるようで、僕が帰りに餃子の神様くそくらえなど願っている横で真剣なお祈りをしている若い女性がいた。あんなじじいになにを祈っても無駄だろうと思った。
 僕はあのじいさんが餃子の神様であることをいつの間にか認めていた。

 餃子の神様と餃子屋で会ったのはそれっきりだった。ちびちび餃子を食べながら餃子の神様が来るのを待ったこともあるが、二度と餃子屋に現れることはなかった。
 せめて餃子の神様が自分で食った分だけでも餃子代金を返せ、という気持ちも正直あるが、ちょっともう一回会ってみたいと思っていた。どれだけの人の願いを叶えたのか、本当は叶えていないのか、餃子以外の願いも本当は叶えることができるのか、などいろいろ気になることがあった。
 餃子の神様の像がお願い事を叶えてくれるという情報はどんどん広まっていった。どの像にもお祈りをしている人がおり、頭でっかちの像にむりやり手編みの帽子をかぶせるばあちゃんもいた。餃子をお供えものにすることはカラスを呼び寄せてしまうため禁止された。仕方なく餃子の神様を信じるものは、紙粘土で餃子を作ってお供えした。クオリティは各人でばらばらだった。それがほほえましいようにも、なんだか不気味にも思えた。

 ある日駅ビルをうろうろしていると、餃子の神様を見つけた。餃子の神様はエスカレーターで下ってゆき、女性下着のある階で降りた。女性下着になんの興味があるのか気になった僕は同じ階で降り、餃子の神様の後を付けた。餃子の神様は女性ものの下着を見もせずに、通路をふらふらと歩いていた。手には杖を持っていたが使っていなかった。足取りが危ないなと思っていたら、足がもつれてマネキンにぶつかって倒れてしまった。

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