自宅に帰り、自分の部屋のパソコンで“口臭”“ダイエット”で検索してみた。腐るほどの件数がヒットした。「口臭を消す8選」「一瞬で口臭を消す方法」「たった一日3分で痩せる!」「誰でも超簡単ダイエット」などなど、原因と解決方法がたくさん書いてある。
「・・・。」
どれも似たり寄ったりで、ピンとくるものはなかったが、だからと言ってやらないわけにはいかない。
良いとこ取りをしようと、もう一度、各サイトに目を通す。
「・・・ご飯食べないの?」
妻が後ろから声をかけてくる。振り向くと怪訝な顔をしている。リビングから何度も呼んだのに全然気がつかなかったようだ。
「ごめん、食べる。」
一旦パソコンから離れた。
「決めた。ダイエットしようと思う。」
夕飯が済んだ時に妻に宣言した。
「どうしたの?」
「50になって、自分に甘えていた。ここ最近は身の回りの事に気が回ってなかった。少しは、いや、かなり意識して変えていこうと思う。」
「出来るの?」
「出来る!」
「じゃあビールいらないわね。太るから。」
「・・・。」
一瞬で心が躓いてしまった。それはかなり辛い。
「飲み過ぎなのよ。適度に飲むならいいけど。思いっきりビール腹でしょ。」
一度言いづらい事指摘したからなのだろうか、妻は遠慮なく忠告してくる。
「減らすくらいならいいかも知れないけど、どうする?」
甘い誘惑ではあったが、ぐっと堪えた。決意した傍から挫折するわけには行かない。
「いや、いい。」
「そう。」
妻が台所へと消えて行く。一杯くらい飲めば良かった。
パソコンで調べた結果、やる事を決めた。簡単に三つ。
毎朝マラソン。
禁酒。
しっかり歯磨き&マウスケア。
この三つをしっかりやっていこうと決めた。とても単純な事かも知れないが根本はこんなものだろう。忘れるといけないので手帳一番後ろに書き留めた。
そして試練は早速朝に訪れた。
「・・・。」
目覚ましが5時に鳴りだし、うつろな意識のまま目覚ましの音を消す。
「・・・。」
恐ろしく眠く、動きたくない。頭の中でこれから起きて外を走るイメージをする。
「・・・。」
辛すぎる。通常ならこのままぼやっと起きて、適当に歯を磨き、朝飯を食べて会社に行く。しかし、今はそこにマラソンが加わる。「出来る!」と言った昨日の自分のコメントを思い出す。ちょっと後悔。しかしやらなくてはいけない。
「ううううううううううう。」