思い切って行った留学先では辛口な評価ばかりで腐りきっていた。
もうアカンかな?って思っていた。
でもだからって帰りたくなかった。
またうすい膜が張り付いたような日々の中、そんな私の作品を好きだと言ってくれた彼。
周りが敵ならこの絵は、あなたは僕が守る。と言ってくれた彼。
こんな言葉だけで全てを捧げてしまうほど異国で一人の私は弱っていた。
今まで忘れていたオトンのあの言葉を人任せにした罰なんかも。
「そんなクサい台詞にフラフラしやがって…お前どんだけ男慣れしてへんねん。」
「慣れてるとか慣れてへんとかそんなんちゃうし…。今はもう別に。」
マスターに助けを求めたが笑いをかみ殺したような顔でたもっちゃんを愛でていた。
しかも、ちょっと買い出し~留守番ヨロシクと出かけてしまった。
その後何故か口をつぐみ二人でしばらく私の絵を眺めていた。
たもっちゃんはこの絵を見て何を感じてくれてるんやろうか。
そんな疑問がほんのりと湧いてきて問うてみようかと横目で探ったら思わず目が合ってしまった。
動揺を隠すため茶化してみようとしたが不覚にもうわずってしまってかなわなかった。
こういうのんはたもっちゃんの仕事やんか、と少し腹立たしい気持ちになった。
一人でアワアワしてる私を見ても茶化してくることもなく、ただ凝視している。
そして真剣な目で、
「行けよ。もう一回。やり直してこい。寂しなったら俺が行ったる。もうしょーもない男に騙されんな。おっちゃんとおばちゃんの事も任しとけ。俺が見張っといたる。」
強い口調でそう言った。
あの時、私はその言葉をどんな風に受け取ったら良かったんやろうか。
そんな疑問を表に出さず、ふわふわとしたまま遠く離れた場所であの日のデッサンを超す作品をと日々鍛錬している。
相変わらず本場の評価は厳しいものだが、今回へこたれず居れるのは度々訪れてくれる人の存在である。