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               国際短編映画祭につながる「ショートフィルムの原案」公募・創作プロジェクト 奇想天外短編映画 BOOK SHORTS

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『目覚ましが鳴らなくて』米田竜馬

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このパターン。放っておけなくなるパターン。母性本能をくすぐる何かが自然と出るのだ。狙ってないからタチが悪い。父は母性本能をくすぐる天才なのだ。小学生の頃は、ただの面倒な父で、母はなんで父の言うことを最終的に聞くのだろう?と思っていたが、中学生になってなんとなくわかってきた。私はこの時、自分の中の母性本能というものをなんとなく感じたのかもしれない。

結局、この日は海に行った。三浦海岸。お酒が好きな父は遠出する時は車を運転しない。もっぱら電車だ。この日、父は怪しい袋を持っていた。

「お酒じゃないでしょうね?みっともないから電車の中で飲まないでよ!」と私が言うと、
「酒じゃないよ。酒は海で飲むの。袋の中身は海に着いてからのお楽しみ」と、何かを企んでいる顔で言う。

海に着くと、照りつける太陽、暑い砂浜、焼きそば、ラーメン、海の家。まさに夏真っ盛り。いろいろ眩しい、そして the 開放感。カップルはもちろん、大学生っぽいグループ、家族連れ、遠くの海ではジェットスキーetc、盛り上がっている。

「よーし、いい感じだな。あそこを狙おう」

と、父が指さした方を見ると、大学生と思われる男女が海の中で円形になりビニールのボールでバレーボールみたいなことをしてキャッキャキャッキャ遊んでいる。

父が怪しい袋から中身を出すと、私はギョッとした。何処で出に入れたのか、それはマネキンの頭だった。

「マネキンの頭って、水に浮くんだよ。知ってた?」
「知らないわよ、そんなこと」
「ビート板代わりにちょっとお前行って来いよ」
「行って来いってどこに?」


「マネキンの頭を持つだろ?あのボール遊びしてる大学生っぽいやつらの近くに行ったら、マネキンの頭ごと潜って、円の中心辺りに着いたら、マネキンの頭を離すんだ。そうしたら、突然海から生首が出てきた!ってビックリするんじゃないかなって」
父はとてもウキウキしている。。
「いやよ!自分で行ってよ!」
「バカ、俺が行ったら変態オヤジだと思われるだろう、警察呼ばれたら困るし。だからお前行け」

そう。こういうイタズラの時だけ、父は強引になるのだ。
そして、父に対しては嫌そうな態度をしてみるも、私もちょっとワクワクしていた。血は争えない。

私は向かった。マネキンの頭を持って。
一応、マネキンが自然に泳いでいるように意識して、大学生の円に近づく。実際どう見えているかはわからないが。
一気に潜って、円の中心を目指す、あの時の高揚感は今でも覚えている。
円の中心だと思ったところで、手を離す。マネキンの頭が海上に浮いていく。
「キャーー!!!」
と、海上から驚く声が小さく聞こえる。バッチリ成功だ。

あ、私はどうなる?息が続かない、、、ああ、私も海上へ。。。

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