彼は絶対に夏目漱石の言葉なんて知らないし、私の気持ちは少しすっきりしただろうなと思った。
『まったく割り切れてないじゃん。』
思わず口に出てしまった。
そして、月を見ながら、今日のことを思い出す。
彼と長く居るためにホッピーセット頼むって、どれだけ彼のこと好きなんだよ。と、最後の一杯の注文の時を思い出し、恥ずかしくなった。
今思うと、私の中では、告白に近い大胆な行動だったかもしれないなと思った。
私は、膝の上に置いたトーとバッグを、グッと抱き寄せ、顔を埋めた。
今、私が I LOVE YOU を訳せと言われたら、『ホッピーセットください。』と、訳すだろうと思い、フッと笑った。