さらに、ふだん居酒屋にも行かない下戸な私ですら、いつの間にか「ホッピー」を知っているという事実も奇天烈でならなかった。
桁違いの感心ばかりが心に広がる中、10歳の頃に開業した石渡秀氏が、陸軍の御用聞き商人として現在のミッドタウンに出入りしていたいうではないか。
心がグッと引き込まれた。
私は以前、ミッドタウンに勤務していた時期があった。
毎日、大江戸線に揺られながら六本木に着くと、足早にオフィスへと向かっていた。
当時の思い出は今でも鮮明に覚えている。
あの地が歩兵第一連帯の駐屯地だったと聞いたことがあった。隣接する檜町公園には石碑もあった気がする。時を越えて、石渡秀氏と同じ地を歩いていたとは…。
彼は何を感じ、何を思っていたのだろう。
単純にも勝手に親近感を覚えた私は、さっそく「Hoopy Hoopy AWARD 」に参加してみることにした。
好奇心で読み進めた「テーマの詳細」は、非常に面白かった。私にも書けるだろうか。
ホッピーを愛する人々が沢山いる中で、正直私とホッピーの間には、残念ながら距離がある。顔は知っているけど、話しかけたことはない…。そんな距離感だ。
まずは、ホッピーを手に取るところから始めよう。でも、どこに売っているのだろう。
そんなレベルから、私の「Hoopy Hoopy AWARD 」は始まった。
私の一抹の不安をよそに、ホッピーは近くのスーパーで発見することができた。
今まで私が気付かなかっただけで、高くも低くもない、ちょうど目線の位置にあった。
ワインや焼酎と肩を並べ、威風堂々と棚に陳列されている。
<BOOK SHORTS>で見た黄色のラベルの現物が目の前にある興奮は、テレビで見ていた芸能人を間近で見た感覚と似ていた。
「あった~…。」
一人だったが思わず声が出でしまった。
無事ホッピーが見つかったのはよかったが、黄色いラベルの隣にBLACKと書かれたボトルが兄弟のように並んでいた。二種類あるなんて聞いていない。どちらを購入すればいいのか分からない。酒コーナーで立ち往生している私の横から、ヌッと手が延びたかと思うと、スーツ姿のおじさんが黄色のホッピーをカゴに入れて去っていった。
(そうか、こっちか。)