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「良かったら、呑んでください。お近づきの印に」
私はマドラーでゆっくりとその中身をかき混ぜた。カクテルを作るように丁寧に、大切なものを扱うように。胸がいっぱいで、声が震えないようにするのが精一杯だった。
「穂積です。こちらこそ、宜しくお願い致します。本当に、今日はありがとうございます」ごくりと呑んだホッピーは、熱を持った私の胸を更に強く、ぽっぽぽっぽと暖めた。
ふと、恥ずかしい台詞が頭をよぎる。言った方がいいのかな、でもなあ、とつい癖でつまみ達を眺めてしまう。彼らは何も言わない。おそらく、この先何も言うことはないのだろう。
さいならだ。さいなら、愉快な仲間たち。
後悔のないように、伝えなければな。私は近藤さんに向き直って言った。
「私はずっと、ずっと友達が欲しかったのです」
近藤さんは、できたばかりの私の友は、親指をぐっと立て、わっはっはと高らかに笑った。