閉店間際の混雑した居酒屋を出ると、陽気な笑い声を響かせながら軽い足取りでホテルへ戻っていった。
翌日、ミキはハングオーバー気味な頭を抱えて、出発時間ぎりぎりの新幹線に滑り込んだ。
(今度は、ふるさとまで行ってみようかな)
車窓を流れゆく洗練された横浜の景色にさよならを告げて、土産袋の中のホッピーをちらりと覗き込んだ。ふいに課長の好奇心に満ちた顔が思い出されて、ミキは心の中でぼそりと呟いた。
「おかげさまで、ばっちり良い出会いがありましたよ。残念ながら、男ではないですけど」
車窓に視線を戻すと、青く澄み切った空に、まあるい綿雲がぽっかり浮かんでいた。