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『ボトルが空になるまで』小野みふ

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 金曜夜九時、名古屋駅近くの居酒屋。
 ミキがビールを飲み干すと、課長が景気よく二杯目を注いでくれた。
「おつかれ。ほら、恋の傷を癒しなよ」
「ありがとうございます。お酒で癒されればいいんですけどねえ」
「そうだなあ。じゃあ、旅行でもしたらどうだ?」
「傷心旅行ってやつですか?」
「それ、それ。仕事もひと段落したことだしな」
 飲料メーカーでマーケティング部に所属するミキは、初めて任されたイベント企画を成功に導いた。今晩はその打ち上げだ。
 ちなみに、寝る間を惜しんで仕事に没頭している最中に、大学時代からつきあっていた同い年の彼氏に別れを切り出された。課長は仕事を任せ過ぎたと少し責任を感じているようだが、彼と野関係はとっくに冷めていた。ただ終わりにするのが怖くて、すがりついていただけだった。少し落ち着いて、今はそう思えるようになった。
「もしかしたら、新しい出会いがあるかもしれないぞ」
「そう簡単に見つかったら、苦労しませんよー」
 能天気な課長の提案に悪態をつきつつも、ミキはその晩遅く、ほろ酔い気分で旅行を申し込んだ。
行き先は、横浜。
 旅行サイトのトップに載っていた初夏の横浜特集に誘われるように、最新ホテルのスペシャルレディースプランの予約完了画面までポチポチッとクリックしていった。
 こうして一週間後、ミキはボストンバッグ一つ抱えて、東京行きの新幹線に乗り込んだ。二時間半弱で到着した新横浜からJR線に乗り換えて、横浜駅近くの見上げるほど高い豪華なホテルにチェックインしたあと、コースに含まれていたエステを受けた。いざ外に繰り出すと、冷たい夕風が、火照った体を吹き抜けて気持ちいい。
 先程よりも幾分軽くなった足を大きく動かして、薄暗がりの道を颯爽と闊歩していく。活気漲る横浜の中心地を絶え間なく行き交うスーツ姿の男たちをちらちら見ながら、
「そうだ。今日はまだ水曜日だもの。みんな仕事なのよね」
 と改めて口にすると、何だか自分が特別なことをしているよう気がしてうれしい。
(展望台で夜景を見るには、まだちょっと早いかな)
 そう思って、ひとまず小腹を満たすことにした。目抜き通りを抜けて路地に入ると、派手な黄色いのぼり旗が目に飛び込んできた。ポップな赤い字で、『ホッピー』と書かれてある。
「ホッピーって、何だろう?」
 かわいらしい名前に惹かれて暖簾をくぐるなり、色黒の店主が気さくに声をかけてくる。
「いらっしゃい。どこでもお好きな席にどうぞ」

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第5期優秀作品一覧
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