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『ホッピーの店』大田陽介

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そういうと、館田さんは健一の肩に手を回す。なんだか、館田さんと健一が仲良くなっている。
目の前にある食べかけの料理も、残り少ないシャリキンも、健一と館田さんの距離感も、私がシャリキンをお代わりしていることも、全て思い出せない。まるで自分だけがタイムトリップをしたようだ。この煙で白く霞んだ世界に。私は、自分のジョッキを空ける。
「すいません、シャリキンお代わりぃ!」
空いたジョッキを高々と掲げ注文をする。
「だから、姉ちゃん声でかいって!」
健一が私にツッコミを入れた瞬間、健一は丸椅子ごと後ろへひっくり返った。
「お前飲みすぎだよ!」
と大笑いする私と
「おいおい、弟君大丈夫か?」
と心配する館田さん。ひたすら謝り続ける健一。なんだか今夜の酒は、悪くない。

首筋から滑り込んでくる冷気を纏った風に思わず肩をすくめる。
私たちは、ホッピーの店を出て駅の方へ向かって歩いていたはずなのだが、なかなか駅に辿り着けず、結局目についたコインパーキングに座り込んだ。視界がぐるぐる回って、いつの間にか膝をすりむいている。
「てかさ、ホッピー超酔うね」
私が健一にもたれてそういうと、健一はゆらゆらと上半身を動かしながら
「俺さ」
と返す。
「何?」
「俺・・・。ホッピー、今日、初めて飲んだんだよね」
「え、うそ?」
自らホッピーをリクエストしたくせに、衝撃の事実だ。
「え?じゃあ、何でホッピー飲みたいって言ったの?」
「レインボーの高橋さんとさ、この間飲んだのよ」
健一は音楽をやっている。かつてはバンドを組んでいたが、今はフリーで活動をしている。
今は音楽だけでは食っていけないので、音楽誌の出版社でアルバイトをしている。
ちなみに、レインボーの高橋とは、レインボーシッツというパンクロックバンドのボーカルで、健一のバンド時代の先輩にあたる。売れない時期が長かったが、深夜アニメとのタイアップが決まってから一気に知名度が上がり、今では大人気バンドになった。私と健一が知り合ったのも、健一のバンドとレインボーが対バンをして、その打ち上げに参加したのがきっかけだった。あれが20歳の時だから、かれこれ15年の付き合いになるのか。ちなみに、当時、私は高橋と付き合っていた。その事を健一はきっと知らないはずだ。
「おー、高橋さん懐かしい」
「なんか、その時、高橋さん、ずっと黒のホッピー飲んでてさ。俺が、おっさん臭ぇって言ったの。そしたら、高橋さん、いいじゃん、おっさんで。上等だよつってさ。なんか、それが超カッコいいのよ」
「何それ。それでホッピー飲みたいって言ったの?」
「いえ~す」
「馬鹿じゃない」
私は笑って返す。きっと健一はこの会話を覚えてないだろう。
「高橋さん、元気にしてた?」
「うん。なんか、今度、武道館やるから来いってチケットもらってさ。すげーむかつくわ」
「なんでよ、いいじゃん」

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