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『ホッピーの店』大田陽介

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私は何の意味もなくつぶやいたのだが、その言葉を言い終わった瞬間、なぜか目の奥が熱を帯び、一瞬で視界が滲んだ。もう酔いが回ったのか。
「いや、田村とは別れて正解だったと思うよ」
健一はそんな私に気付かず、いつの間にか出てきていたキャベツをつまんでいる。
私は心の中で、「健一、こっち見るなよ!」と叫びながら、ジョッキのホッピーを一気で流し込み、ふぅ~と大きなため息をつく。若干の涙目は大目にみてくれ。
「え、何?そんな感じ?」
あっけにとられる健一に
「当たり前じゃん、ほら、健一も」
と半ば乱暴に返すと、健一もぶつくさ言いながらジョッキのホッピーを全て流し込んだ。
私は勢いづいて中を2つ注文する。
「いや、もうホッピーないから、中じゃなくてセットだろ」
とツッコむ健一の奥から、仏のような初老のおじさんの笑顔がのぞいている。
「すいませんね、うるさくて」
私は何のためらいもなく、仏のおじさんに話しかける。
「こらこら、絡まない」
健一がまんざらでもなさそうに私をたしなめる。
「いやいや、楽しく飲むのは結構。それより、もっとおいしいホッピーあるけど?」
仏のおじさんは笑みを浮かべてそういうと、半分ほど茶色の液体が入ったジョッキを掲げる。
「え、なんですかそれ?」
私が興味津々に返すと、仏のおじさんは、焼き場の男に
「大将、こちらのホッピーシャリキンに変えて」
とオーダーをする。
「凍った焼酎をホッピーで割る。シャリキンね。これがうまいんだよ」
仏のおじさんは目を線にして笑う。
「おじさんお名前は?」
さっきの一気が効いたのか、酔いが回っていることが自分でもわかる。
「だから、あんま絡むなって」
「いいじゃん、いいじゃん」
これ以上行くと私は歯止めが利かなくなる。田村といたときは、この辺でゴングが鳴り、さらに2,3杯飲んだところでケンカが勃発する。でも、いくら私が醜態をさらそうが、健一がキレることはないだろうし、仏のおじさんが怒ることもないだろう。
もしかしたら、店出禁になるかもしれないけど。
「私は、館田って言います。神の田んぼじゃなくて、図書館とかの館に田んぼで館田」
「へぇ~珍しい漢字ですね」
私より先に、健一が返す。なんだかんだ、健一も酔いが回ってきているのか。
「はい、シャリキンホッピーね。お兄さんは黒にしといたよ」
焼き場の男・・いや、大将がシャリキンを2つカウンターに並べる。
「うわ!うっまそ!」
氷は入っておらず、凍った焼酎をホッピーで割ったシャリキンを前に感動する健一。
「なにこれ!超~~うまそうじゃん!」

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