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『ホッピーの店』大田陽介

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私は、田村と別れた後、昔、合コンで知り合った代理店で働くナオキという男に連絡を取り、一瞬の恋をしていた。見た目がいいわけでも、スタイルがいいわけでもなく、口数も少なく、冴えない男なのだが、どこか謎めいていて、発想が人とずれていて面白かった。
しかし、合コンの後は何となく疎遠となっていて、一度も会っていなかったが、田村と別れた後、なんだか無性にナオキと会いたくなった。「今豊洲にいるよ~!ナオ君の会社の近くかな?」とメッセージを送ると「welcome to Toyosu!」と謎の返しが来て、ナオキのキャラを思い出しさらに愛おしくなった。結局その日の夜に、私の方から半ば強引に食事をする約束を交わした。久々に会っても相変わらず冴えない男で、食事の最中も、テンションが低く、ナオキが潔癖症だという話や、東南アジア人の見分け方の話等、変な話ばかりを低いテンションで話すのだが、どこかに魅力を感じ、結局居酒屋を3軒はしごした後、酔った勢いで、ナオキの部屋に上がり込み、一夜を共にした。
カーテンの隙間から差し込む朝日で目を覚ます。若干二日酔いだが、裸の体に絡みつく毛布が気持ち良い。潔癖症という割に、部屋はそこそこ散らかっていて、流しの水垢やバスタオルの生乾き感が気になったが、私の横で小さく丸まって眠っているナオキを見ると、なんだか人間っぽさを感じ、私はこれからナオキと付き合うのかななんてぼんやりと考えていた。昼から予定が入っていた私は、ナオキを起こさないようにベッドから出ると、着替えを済ませ部屋を出た。「昨日はありがとう。楽しかったよ!昼から予定があったから先に出ちゃった。起きたら連絡ちょうだい!」特に何を考えるでもなく、メッセージを送ったが、そのメッセージが既読になることはなかった。とたんに全てが許せなくなる。潔癖症のクセに部屋が散らかっていたことや、水垢や生乾きのバスタオル、変な話や変なメッセージの返しも全てに腹が立つ。
「ねぇ、私なんかしたのかな?やり捨て?って聞いていいと思う?」
「そんな奴、ほっといていいよ。ひどすぎる。あ、すいません!中を・・」
「あ、私も」
「じゃあ、二つで」
健一がヤンさんに中を追加する。
「ナカツーでー」
ヤンさんは独特のイントネーションでオーダーを叫びながら去っていく。よくよく考えてみると、焼酎はジョッキの半分ほどの量で氷も入っている為、ホッピー1本で3杯くらい飲める計算なのか。そう考えると、安上がりだが、結構酔いそうだとも思う。
「そっか、代理店とはそういう結末だったのか」
健一は少しがっかりしたように話す。
「はい中ねー」
カウンターの中から、焼き場の男が中を継ぎ足す。私たちは慣れた手つきでホッピーの残りをジョッキの中に注ぎきる。気持ちホッピーが足りないせいか融けた氷のせいか、最初に比べると色が薄い気がする。
「何だろ、私、結局田村と別れて寂しかったのかな・・」

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