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『ホッピーみたいな』十塚三太

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 泣き腫らして目が真っ赤っかになった俺の前には、喜恵ではなく同僚の晋平が座っている。そして、テーブルにはホッピーセットが置かれている。
「いや、ざまあない!!喜恵ちゃんに対する普段の拓郎の態度、絶対駄目だと思ってたもん!」
 案の定、晋平は事の顛末を聞いて爆笑している。俺はその様子を無視して話し始めた。
「ホッピーは、麦芽飲料の“ソト”を焼酎である“ナカ”に入れて飲む。ホッピーは生ビールに比べて安価だし、何より太りにくい。低糖質、低カロリー、プリン体ゼロ」
 晋平はニヤニヤしながら「いやあ、優しくていいよな、ホッピー」と頷いている。
「ちなみに、マドラーがついてくるけど、かき混ぜない方がいい。炭酸が飛ぶからな。そのまま一気に入れるんだ」
「なるほど、余計なちゃちゃは入れず、その人のそのままを活かすってことか」
 晋平の声は笑いを堪えているとき特有の震えた声をしている。もう我慢の限界だ!
「あぁそうだよ!喜恵はな、ホッピーみたいな女の子だったんだよ!美人じゃなかったけど、愛嬌のある顔で、お高くとまってなくて、身近で安心感があって、何より優しかった!だけど、俺がちゃちゃを入れすぎた所為で炭酸が全部飛んじまった!!」
 喜恵は俺を振った後、バツが悪かったのか会社を辞めてしまった。せめて謝ろうと思い、連絡を取ろうと思ったが、番号を変えてしまったようで連絡の取りようがなくなった。
「いやあ、喜恵ちゃんは仕事ではドジなところが多かったけど、それを差し引いても余りあるぐらい優しくて、何より癒されたのになあ。部署内にあんな良い子はもういないぞ」
「うわぁぁ!バカは俺だったんだ!なんにもわかってなかった!無知だったのは俺だったんだ!喜恵ー!!俺が悪かった、ぜめて最後にちゃんと謝りたかった!本当にごめん!うわぁぁ!!」
 晋平の発言が、部署内唯一の癒し系女子を辞職に追い込んだことに対しての嫌味だとわかっていても、一度決壊した感情を抑えることは出来ず、口に出せば出すほど気持ちは昂ってしまう。
「あの、お客様、少し声のトーンを下げて頂けると…」
「あぁっ!あなたはあの時の店員さん…あぁ、喜恵、戻ってきてくれよお!!喜恵えぇ!うわぁぁ!!」
「お客様!他のお客様にご迷惑になりますので!」
 俺は込み上げる悲しみと喪失感は店員の注意でも意味をなさず、力の限り店内で泣き叫んだ。
 晋平の爆笑、店員の怒声、そして俺の慟哭が店内に響き渡った。

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