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『Time to HOP!』石澤明

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 今朝は化粧室でも一緒だった。
 それにメールだってチャットだってある。一体いつの時代の人間なんだ。
 あまりの言いがかりに一気に頭に血が上ったのを必死で抑えているとさらに畳みかけてくる。
「久住さんさあ、直行とか直帰とか多いじゃない。
アナタさあ、そんなに残業したくないの?子育てが大変、ってわかるけど、そうやって特権ふりかざすのもさあ、どうかと思うよ。」
「今だって必要な残業はやっています。それ以上が必要というのなら、それが業務命令であれば従います。
・・・もっとも、業務時間中にたっぷりタバコでくつろぐ時間がある方たちができない仕事があるのならばですが。」
 やってしまった。売り言葉に買い言葉。


「うわっ!キタコレ!まさしくキャットファイト!」
緊迫した課内の空気を独り言には大きすぎる平田の声が破った。
 毒気が抜ける、とはこのこと。
 頭の良い子だと思っていたのに、ここでこのネットスラングで煽りか・・・。
 おかげ様でなんとか我に返ることができた。
・・・できたけど、いい年して愚かな「負けず嫌い」が頭をもたげてきて絶対に言ってはいけないとおもっていた言葉を最後に吐いてしまう。
「課長は私を子持ち女だからと特権を要求してきた、と言いますが、女であることにに助けられていたのは貴方のほうです。
 貴方が男性だったらもっと早くこの状況をコンプライアンス担当に相談しています。
 私の言ってることわかりますよね?」
 ほんと、この、仕事がまともにできない糞アマ、あんたがなんで課長なのよ。
 心の中でうんと汚い言葉で罵って、あああ、私も汚い、と後悔するがドロドロは止まらない。

 凍り付く周囲を無視してその日の仕事を無表情で淡々と片付け、帰宅し娘にご飯を食べさせて、音読の宿題に付き合い、一緒にお風呂に入って明日の準備を確認しておやすみなさいをする。
 そこまで何とか、持たせた。
 やっと、自分だけの時間がきて、泣くことができる。やっと後悔と不安と怒りともろもろの感情を涙に溶かせる。
 溶かせたからと言ってじゃあ、明日から、いったいどうすればいいのだろうか?
 業務指導だから、という逃げ道を作っておいたつもりだろうがこれは明らかに理不尽なパワハラだ。周りも見ていたし、無意味な稟議の取り下げと再申請のワークフローのログは残っている。コンプライアンス相談窓口への訴えはできると思う。
 でも、なんでだろう。
 なんでこんなことになったのだろう。
 初めての女性上司だったから、すごく期待していた。
 営業の経験が無い課長にできるだけ丁寧に自分の立場なりにわかっているこのビジネスのおもしろさや担当顧客の情報を伝えてきたが、あまり興味をもってもらえなかった。
 失望感を覚えながらもマネジメントスタイルは色々ある、この人のスタイルが自分の期待していたものではなかったからと言って不満に思ってはいけない、と自分の仕事に集中した。

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