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『Time to HOP!』石澤明

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 これは相当に心象が悪い。
 オフィスビルの最上階にある喫煙所まで平野を探しに行く時間すら惜しく感じて、早鐘のように打つ心臓の音を深呼吸で落ち着かせながら自分でココノエデリカに電話を掛けた。

 課長を先頭に喫煙者たちがオフィスに戻ってきたのは弊社(・・)の終業時間である18時から10分ほど過着た頃だった。
 ほかの人間が就業時間中に何していようが関係ない。
 問題は顧客からの度重なる連絡を無視していた平田だ。
「平田君、ココノエデリカさんに謝りに行くよ。」
「えー、俺もしかしてなんかやらかしましたかね?」
 これは本気かそれともとぼけているのかがわかりかねて無表情になる。
 発注ミスである。
 ほぼルーティーンのココノエデリカさんの唯一の注意事項は四半期に一度受注生産のOEM製品の発注をかけなければいけないこと。しかもこれは生産リードタイムが2か月かかるものなので事前に見込みを確認しつつ調整をかけなければいけない。
 平田にはこれだけは忘れてくれるな、とかねてからお願いしていたのに。
 それにもかかわらず平田は発注をしていなかった。
 今回はココノエデリカ自体も予想以上の消費がでてしまったので早めに増発をかける旨を平田にメールで確認をしてくださっていた案件で、昨日が平野君が回答していた増発分の初回納品予定日だった。
 にもかかわらず、納品されないので心配になって連絡をくれたところだった。
 当てにならない喫煙組を待っている間に他の支店に在庫の有無を問い合わせて、運よくキャンセルがあって持て余していた九州から融通をつけ納期を確認し、顛末書の下書きをあらかた作成したところに帰ってきた平田の首根っこを捕まえてタクシーに飛び乗った。
「なんだ、久住さんって、残業、やればできるんじゃないですか。」
 車中で平田がおもむろに口にした言葉がこれ。
 一体この10分間、私の傍らで何を耳にしていたのだろう。
 運転手に携帯の利用を断るとすぐに夫と連絡を取り、子供ルームのお迎えを代わってもらうように頼んだ。しかし夫もこの時間にすぐに対応が取れず、慌てて保育園時代にお世話になっていたことのあるファミリーサポートの方にイレギュラーでの対応を頼み込み承諾して頂き、改めて子供ルームにその旨を連絡してようやく電話を切り、夫に結果報告のチャットを送り終わったところに平田のこのセリフだった。

「私のことは今はどうでもいいでしょう。それよりきちんと謝罪しないいと。」

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