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『ホッピハッピと輝く』 渡辺鷹志

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 とりあえず、二人でいつものように近況報告をしていると、注文していたお酒が来た。酒井は生ビールを受け取った。ふと、酒井は大麦が注文したお酒に目がいった。それは酒井が見たことがないお酒だった。
「大麦、それは何だ?」
 酒井が訊くと、大麦は「ホッピーだよ」とさらっと答えた。
「ホッピー?」
 酒井が訊き返すと、大麦は驚いて、呆れたような顔をした。
「まさか、お前ホッピーを知らないのか? 30歳にもなって。一流企業に勤めているといっても、何かつまんない人生を送っているんだな」
 大麦が軽蔑するような目で酒井を見た。酒井は、なぜこんなことでそこまでひどく言われなくちゃならないんだと思い、ちょっと頭にきた。
 大麦はそんな酒井の表情を見て笑いながら、ホッピーについて酒井に教えてくれた。酒井は馬鹿にされて面白くはなかったが、じっと大麦の説明を聞いていた。
 大麦の説明によれば、ホッピーはビールの風味のする炭酸飲料のことで、焼酎をこれで割って飲むのが一般的な飲み方とのことだ。大麦は、ホッピーの歴史、これまで数度のブームがあったこと、現在は健康志向の飲料としても知られていることなど、話し続けたら何時間でも話せそうな感じで次々と説明した。
 酒井は大麦の話が終わりそうもなかったので、「よし、わかった。俺もホッピーが飲みたくなってきた」と言って、店員を呼んだ。店員が来ると大麦の話がいったん終わったので、酒井はほっとした。二人はホッピーを注文した。
 女性の店員がすぐにホッピーを持ってきてくれた。店員は酒井にホッピーを渡すと、ニコッと微笑んだ。その店員が美人だったこともあり、一瞬酒井はドキッとした。店員は大麦にもホッピーを渡して戻っていった。大麦はその美人の店員を見てにやにやして幸せそうな表情をしている。
 酒井はホッピーをひと口飲んでみた。確かに、ビールのような味がするが、ビールとも焼酎とも違う不思議な味だと思った。ただ、正直まずいとは思わなかったが、特においしいとも思わなかった。
「ま、何回も飲んでいればこのうまさがわかってくるよ。ほらまわりを見てみな」
 大麦が言ったので、酒井は店の中を見回した。なんと、店の中のほとんどの客がホッピーを飲んでいた。酒井は驚いて「ここはホッピーの専門店なのか?」とメニューを見てみた。確かにホッピーは載っているが、他のお酒もあるし、食べ物もどこの居酒屋にもありそうなものばかりだった。
 酒井は再び店の中を見回したが、特に他の店と変わった様子はなく、どこにである普通の大衆居酒屋のようだった。客はみんな楽しそうにホッピーを飲んでいた。みんなが楽しそうにお酒を飲む様子なんてどこの居酒屋にも見られることだが、酒井の目にはなぜか楽しそうにホッピーを飲む客全員の姿が輝いて見えた。
「お前、その様子じゃホッピハッピも知らないみたいだな?」
 大麦は笑いながら言った。
「ホッピハッピ? 何だそれ?」

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