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               国際短編映画祭につながる「ショートフィルムの原案」公募・創作プロジェクト 奇想天外短編映画 BOOK SHORTS

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『Is it strange or roman?』イワタツヨシ

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 それから、それに付随して奇妙だったことは、その夏季休暇中に大学の一室、天井の点検口が何者かに壊されていたことだった。

 連鎖したように、その一年後、Bと親友だった女子生徒のCも、Bを探しに行く、と私に言い残して失踪した。

 それからDやEも……。事情が分からないまま私の前から姿を消していなくなり、それ以来、音信不通になっている。

 しかし中には、長らくの音信不通状態から再会を果たすことが出来た人もいる。
 互いに二十二歳のとき、ある日突然――就職が内定した私が都内に引っ越した直後――連絡が途絶えてしまっていたNとは、それから十年後、とある街で偶然的な再会を果たすことになった。
 当時の私たちの関係は微妙なところだった――少なくとも私の方は彼女に好意的な感情を抱いていた。しかし、再会したときには、彼女は既婚者になり、母親になっていた。
「心配してたくさんメールを送った」と、私は当時のことを思い出して言った。
 すると彼女は「たくさん?」と首を傾げた。「最初のメールは届いた。でもそのメールを返そうとしたときにちょうど…」
 十年前、ちょうどそのとき、Nはボリビアのウユニ塩湖を車で走っていた。話を聞けば、彼女は返信に添付する写真を撮っていたときに、手を滑らせて車の窓から電話を落としてしまったらしい。それで携帯に入っていたアドレス帳をすべて失った。
「落とした携帯は見つかったの?」
「探した。でも見つからなかった」と彼女は言う。「たぶんまだウユニ塩湖のどこかにあるわ」
「それは、だいぶ塩漬けだね」
「そうね、それで…たぶん七年(・・)は(・)保存(・・・)が(・)効いて(・・・)いた(・・)と思う」

3
 私は大学卒業後、東京の大手商社で働いていた。百名以上いたその同期の中にXという男がいた。
 彼は初めの二年間、プログラマーとしてシステム部に勤めていたが、ゼネラリストとして評判が良く、本人の希望もあり、三年目になって私が勤めていた総務部に異動してきた。聞いていた通り仕事が出来、陽気な性格で打ち解けやすく、子どもみたいに悪戯好きで、一緒にいて楽しい人間だった。
 しかし結局のところ、Xが本当は何者だったのか、それは今でも不明だ。
 ありうるべきことの一つとして、彼の正体は「貿易会社の社長」という一説がある。それはある日、X本人が打ち明けたことで、彼ととりわけ親しかった私と総務の女性先輩社員Yだけがその秘密を知っていた。Xが自ら経営していた会社は、外資系貿易会社で、その規模は年商で五百億円程度。
「今は暇だから。元々、高校時代の仲間と起業した会社で、経営の舵取りはその有能な仲間に任せておけばいい」と、彼は、すでに成功を収め、そこから毎月高額な報酬を受け取っているのに、わざわざ腰かけ仕事みたいに、しかも私たちと同じ立場、条件で他人の会社に潜りこんで働いている理由を話した。または、「この商社が展開している事業に興味がある」とも言った。
 確かに、彼が身に付けている物はどれも高級ブランド品だった。食事に行くと、いつも彼がブラックカードで支払いをした。一度、彼にその会社のオフィスの写真画像を見せてもらったことがある。

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