アウトローで、ミステリアスで、極端で、危うさがあり、儚さがあり、優しさがあり、人懐っこい子供のような。
どうやら私はそういう人間に強く惹かれるらしい。
あるいは私が彼らに強く惹かれるのは、彼らがどういう人間なのか、ということではないのかもしれない。
彼らは、出会って間もないうちに、運命みたいなものがねじれ曲がったみたいに、あるいは事件に巻き込まれたかのように、突然、よく事情が分からないまま私の前からいなくなった。それ以来、音信不通。
きっと誰の人生にもそういう人間が一人や二人はいるだろう。私は、今でもふとしたときに彼らのことを思い出すことがあり、夢に見ることもある。彼らは一体何がしたかったのだろう、あれは一体何だったのだろう、と。
気がかりで、これまでに、共通の知り合いを当たったりSNSに彼らの名前を探したりしたことくらいはある。しかし彼らは見つからなかった。もっとも、探偵を雇ったり人生の大半の時間を犠牲にしたりしてまで彼らを探して伝えたいことがあるわけでもないが。
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例えば、高校一年のときにクラスメイトだったAは、私に初めてスノーボードを教えてくれた友だちだった。シーズンが来ると毎週のように二人で出かけた。授業をすっぽかして平日に出かけたこともある。彼とはこれからも友だちで、長い付き合いになるだろう、と私は思っていた。
しかしAは、一年で高校を退学し、カナダに引っ越してしまった。それを私は後で教師から聞いて知った。私たちは新学期が始まる数日前まで会っていたが、彼はそういう大事な話を私に一言も話してくれなかったのだ。
もうずいぶん昔の――携帯の普及が進み、ようやく社会人が個人携帯を持ちはじめた頃の――話だ。もし互いに携帯電話を持っていたら私たちはまだ友だちでいられたかもしれない。
それから例えば、大学一年のときにクラスメイトだったBは、理系の大学で、割合が圧倒的に少ない女子生徒の一人だったが、彼女は、その点も含めて、講義の内容にも関心が持てず、その大学に入ったことを後悔していたようだった。
それから現実逃避をする傾向があったが、彼女のそれは変わっていた。
彼女はよく講義中に教室の天井をぼんやりと眺めていた。彼女がいつも気にしていたのは、どの部屋にも大抵はある、天井の(業者が設備配管や配線の操作、点検で開ける)点検口や、換気口だった。どうしてそんなところを見ているのか、聞いたことがある。
すると彼女は、「あそこから逃げて外に出たい」と言った。つまり、部屋の点検口のようなところから建物の外に出ることを妄想することが彼女のストレス解消法だった。
まるで脱獄映画みたいだ。「あんなところから逃げなくても、逃げるときは部屋の前か後ろのドアから出ればいいよ」と言うと、彼女は、「そういう問題じゃない」と怒っていた。
そして彼女はその年の夏季休暇中に退学届けを出していて、そうか、と知ったときにはもう連絡が取れなくなっていた。実際どこへ行ったのか、誰も知らなかった。