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               国際短編映画祭につながる「ショートフィルムの原案」公募・創作プロジェクト 奇想天外短編映画 BOOK SHORTS

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『とりたてて変わったことのないある一日の午後から夜にかけての出来事』佐藤邦彦

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 私と妻の分のホッピーを居間へと運び、カチンとジョッキを鳴らして乾杯する。一息でゴクゴクと半分以上まで呷る。口から喉、胃袋へとヒンヤリが落ちていく。揚げ餃子を一口。ハフハフ。ジュワァ~っ。口中に旨味と熱が広がる。冷えたホッピーを流し込む。クゥ~っ。堪らない!私のジョッキが空になる。少し待つと妻のジョッキも空になったので、二つのジョッキを持って台所へ行く。まずは、先程のジョッキを洗い冷凍庫にいれ、新しく凍ったジョッキを二つとタッパーを取り出し、シャリシャリ焼酎を今度はスプーンで七杯いれる。そしてホッピーをドボドボ。一杯目はゴクゴクと喉を喜ばせ、二杯目以降は濃い目でゆっくり楽しむのが我が家のスタイルだ。
 「ラムネ!」
 二杯目のホッピーを持って戻ると、突然妻が大きな声を出す。どうやらテレビでクイズ番組をやっていたのでそれにこたえたようだ。私もテレビを観ると、司会者が「正解は富士山です」と言っている。
 「あ~っ。不正解か」
 と妻。富士山が正解で妻の解答はラムネ。どんな問題だったのだろう?
 二人でとりとめのない会話をしばらくしていると、テレビ番組はドラマに替わり、私たちのジョッキも空になっていた。
 「もう一杯お願い。なんかさ、あなたの作るホッピーはすっごく美味しいからお願い。ほんとホッピー作るの上手よね」
 と妻が言う。子供騙しのような台詞に「馬鹿にするな!」といささかムッとするのが日本男児として正しい姿なのかもしれないが、2年の交際期間と15年の結婚生活でキチンと躾けられている私は、怒るどころか、少し嬉しい気持ちになり、いそいそと台所へ行く。手には二つのジョッキ。
台所で三杯目のホッピーを作っていて、ふと思った。もしかしたら私は今、幸せなのかもしれないと……。

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