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               国際短編映画祭につながる「ショートフィルムの原案」公募・創作プロジェクト 奇想天外短編映画 BOOK SHORTS

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『とりたてて変わったことのないある一日の午後から夜にかけての出来事』佐藤邦彦

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 「昨日お義母さんがきたでしょ?」
 「うん?」
 休日の午後、私がリビングのソファで読書をしていると妻が話し掛けてきた。妻の話は分かりづらい。なかなか結論を言わないのだ。読書を中断され苛ついたが、ここで「それで結論は?」などと言おうものなら、私の人格に対しかなり辛口な批評を始め、更に話の結論は先送りされることが2年の交際期間と15年の結婚生活で骨身に沁みているので私は本を閉じ、劉備にはもう少し孔明に逢うのを待ってもらうことにした。
 「それでニラレバ作ってたべたでしょ?」
 「うん」
 「あれ少し味濃かったかな?」
 「いや、丁度良かったんじゃない」
 「そう?でもお義母さん血圧高いでしょ?」
 「あれくらいなら大丈夫だよ」
 「そうね。お味噌汁も大丈夫だったかな?」
 「大丈夫だよ」
 「それならいいのだけど。本当に濃くなかった?」
 「大丈夫」
 「良かった」
 「うん」
 「それでさ、揚げ餃子にはニラが入らないと美味しくないでしょ?」
 妻の話が飛ぶ。多分ここからが本題だというのは2年の交際期間と15年の結婚生活で私には分かる。
 「そうだね」
 「今日揚げ餃子を作ろうと思うの」
 「いいね」
 「昨日ニラレバ作ったでしょ?」
 「そうだね」
 「それでニラがなくなっちゃったから買ってきてほしいの」
 やれやれ。何故「ニラを買ってきて」の一言で済ませられないのかと溜息が出そうになるが、そこを忍の一字で堪えて返事をする。
 「わかった」
 劉備には孔明に逢うのを更に待ってもらうこととなるが大丈夫だろう。もう二度も無駄足を踏んでいるのだから。今更少しくらい待たされても気にしないはずだ。
 近所のスーパーまでは徒歩で10分程の行程だ。ただ歩くのも退屈なので、この時間を使って私たち夫婦のことについて少し語りたいと思う。
 よく世間では理想の結婚相手として価値観が同じ人というのを挙げたりしている様だが、この価値観ということにおいて我々夫婦にはほとんど一致するものはない。

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