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『戦国ホッピー丸』風呂屋龍乃介

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 俺はパンフレットの表紙を見る。子ども達と夢中で遊んでいる自分の姿。当時はまさか隠し撮りされているとは思わなかった。
 今度こそベッドに倒れ込もうとしたが、その前に腹の虫が鳴き叫ぶ。
 俺は大きく溜息を吐き、部屋を後にした。

 
「佐野市」をgoogleで検索すると、「佐野市 ラーメン」というワードがすぐに出てくる。栃木県の佐野市と言ったら、ラーメンが有名らしい。
 俺は、ホテルのおばちゃんが言った通り、道路沿いを歩いているが、一向にラーメン屋らしきものはない。スマホの現在地からラーメン屋を割り出そうとしたが、急に画面が真っ暗になる。
 電池切れだ。
 会社の車に搭載されているカーナビが古すぎて、何度も道に迷ってしまい、しかたなく自分のスマホを一日中カーナビ替わりにしていたことを忘れていた。ホテルですぐに充電しておけばよかった。
 古びた外灯がチカチカと道路を照らす。外灯を越えると真っ暗な世界が広がっていた。当に十分以上過ぎている。諦めて引き返そうとした時、ぼんやりとした真っ赤な光が視界に飛び込んで来た。
 どうやら提燈の光らしい。やっと見つけた。
 俺は小走りで赤提燈へと向かう。既にお腹はペコペコだ。ラーメンだけでなく、一日のご褒美として、一杯やろう。
 石畳の階段を登ると、そこには小さな御堂のような飲み屋が一軒建っていた。提燈の光が僅かに屋根の瓦を照らしている。素人目からしても、見事な瓦だ。
 扉の目の前に数秒間立ちすくむ。開かない。そうか手動か。
 俺は年季が入った木製の扉を開けた。
 カウンター以外は、すべて座敷として区切られている。
「うわ、イス席ないのかよ」
 思わずつぶやいてしまった。胡坐さえも苦痛を伴う俺にとっては、かなり厳しい環境であるが、まぁしかたない。しかし、一見すると机もない。どうやってラーメンを食べるのだろうか。
「いらっしゃひませ」 
 初老の男がお辞儀をする。
 俺の視界すべてに納まるくらいの小さな酒場なのに、この店長らしき男を捉えていなかった。
 「どうじょぉ、空いてひる所へ」
 俺はなんとかあぐらをかき、壁を観る。至る所にメニューが貼ってあった。「豆腐」から「焼き魚」、「焼き鳥」「つけもの」……そこからさらに細分化され、百以上ありそうだ。
 しかし、全部を見渡してもラーメンはない。
失敗した。ただの居酒屋だったか。まあしょうがない。それにしても多すぎる。ラーメンを食べる気満々だった俺の舌は、第二希望まで考えていなかった。
 「ごしゅうもんは、おひまりでしょうか」

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