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『天使が通る』室市雅則

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 どうして、こんな風に言ってしまったのだろう。
 初対面だが、この発言までは良い雰囲気だった。自分がもっと大人になれば良かったのだろうか。感じの良さそうな人で、友達になれるかもしれないって思ったのに。
 私から、「そう言えば、目玉焼きに何をかけます?」って、ここまでをチャラにするかのように全く異なる話題を切り出せば、この空気は変わるだろうか。
 グラスにはまだ半分くらいホッピーが残っている。
 とりあえず、これ飲んで考えよう。

 勿体無い二人だ。
 カウンターに並んで座る男と女を正面に見て、店主は思った。
 常連さんと初めて来店した女性。
 ただでさえ、お客さんが少ない中で、女性客とは珍しかった。
 互いに初対面のぎこちなさがあるとは言え、会話のキャッチボールは上手く出来ていた。それに二人が楽しそうにしていたから、一肌脱いでやろうと思ったのだ。
 彼が独り身であることは知っていたし、おどけたフリして、女性に尋ねたら、彼女も独身で恋人がいないという。
 だから、間合いを見て「デートしてみれば」と言うつもりだった。
 長いこと、この商売をしていると飲み方で、人となりや、人間同士の相性みたいなものが分かる。この二人は合う予感がした。
 そりゃ、ホッピーを割らずに飲むお客さんは初めてだから驚いた。だけど、飲み方なんて自由だ。だから、先ほどの「そんな飲み方ないでしょ」は戴けなかった。
 だから、注意と言うか、諌めると言うか「ちょっと、ちょっと」と突っ込もうかと思ったが、女性が先に口を開き、それがなかなか強かったので、空気が萎んだ。
 まずは、この雰囲気をどうにかできないだろうか。
 さらに言えば、この二人をくっ付ける方法はないだろうか。
 いっちょ、俺が道化になるか。
 店主は、自分のグラスを置いた。

 さて、この二人をどうしようか。
 カウンターに置かれたホッピーは思った。
 自分はてっきり「割もの」として、その生を全うすると思っていた。お酒の方面の方々と混じることで、人様に受け入れられる。それがホッピーだと信じていたし、それがホッピーとして生を受けた者の宿命だと疑ったことはなかった。
 だが、違っていた。
 噂で耳にしたことがあったが、まさか、それが自分の目の前に現れるとは。
――そのままで、飲む女がいるらしい。

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