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国際短編映画祭につながる 短編小説「公募」「創作」プロジェクト 奇想天外 BOOK SHORTS

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『天使が通る』室市雅則

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 気の強い女だ。
 男は隣の席に座る初対面の女を横目で見て思った。
 そして、ロックの芋焼酎で喉を潤した。

『天使が通る』だっけな。
 会話が途絶え、(その原因は俺が作った)、沈黙が訪れるつかの間。
 それがまさに今。
 女の前にはホッピーの瓶が置かれていて、この景色だけを切り取れば、バーで飲酒を楽しむ幸福なひと時に映るだろう。
 しかし、少し違う。腑に落ちない。
 その理由は、女が飲むホッピーにある。
 正しくは、その飲み方にある。
 この女はホッピーを生で飲んでいる。俺は、ホッピーは焼酎やらウォッカとかジンなどのアルコールと割って飲むものだと思う。だが、女はそのまんまで飲んでいる。
 それは、邪道じゃないだろうか。まあ、ホッピーだけで飲んだことがないから、美味いのかどうかも知らないし、本当にそれが邪道かどうかなんて分からないけど。
 どうしてあんな風に言ってしまったのだろう。お酒が入っているとは言え、しまったな。
 一人でバーにやって来る風情を持っている女性なら、きっと楽しい時間を過ごせそうなのに。
 素直に謝るべきだろうか。
 それとも「あ、今、天使が通ってる」とワンクッション入れてから、詫びるべきだろうか。いずれにしても、謝らなくてはならないだろうな。
 気まずいなあ。
 グラスにはまだ半分くらい焼酎が残っているから、まずはこれを飲んでからにしよう。

 小さい男だ。
 女は隣の席に座る初対面の男を横目で見ながら思った。
 会話が寸断され、しんとしているので、ホッピーで喉を潤した。

 男のグラスの脇には芋焼酎の一升瓶が置かれており、この景色だけに限れば、無骨な男一匹が酒に身を委ねているように見えるかもしれない。
「そんな飲み方ないでしょ」
 男がこう言った。私が楽しんでいるホッピーを否定した。
 ホッピーを何も割らずに飲んではいけないなんてルールはない…はずだ。私は、ホッピーで口を潤してから、お酒に移行をするのが好きだ。
 ムカッとしたから、口が自制心よりも先に動いた。
「どんな飲み方でも自由じゃないですかね? ホッピーだけで飲んだことあります?」
 そうやって返したら、男は否定も肯定もせずに黙ったから、さらにカチンときた。
「飲んでいるのは芋焼酎ですか? ああそうですか。それだってロックで飲むのが『そんな飲み方』にあたらないって言えるんですか?」

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