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『幸せの味』塚田浩司

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 友人の紹介で知り合い、付き合うようになった卓也がまさかのホッピー好きだったのだ。初デートの時に居酒屋に行き、卓也がホッピーを注文した時は驚いた。まず、ホッピーに白と黒があることすら知らなかった。家にはいつも白しかなかったからだ。あと卓也が店員さんに「中」とか「外」と注文していて、私にはその意味が分からなかった。卓也に説明してもらい「ああ、なるほど」と納得出来た。と同時に「父はいつも外だな」と小さく笑ってしまった。

 その後、結婚して一緒に暮らすようになってから、家の冷蔵庫にはいつでもホッピーが入っている。
「おーい、チヒロ。ホッピーとってくれ」
 テレビを見ながら晩酌をしている卓也の声が聞こえる。
「ちょっと待って。今、火使っているから」
 私は台所でから揚げを揚げながら思った。本当は北村さんのような物静かな好青年が好きだった。それなのにどういうわけか、ざっくばらんな人を選んでしまった。でもいいところもある。父とは違い、お酒の力を借りなくてもいつでも明るくてご機嫌なところだ。結婚してまだ一年しか経っておらず子供はいないけど、将来は良いパパになりそうだ。
「なあ、まだー?」
「だからちょっと待ってって」
 私は火元の熱さに苛立ちながら大きな声でそう答えると、コンロのそばに置いてあるジョッキに口をつけた。
 もくもくと料理作りに励んでいた母とは違い、今ではすっかりキッチンドランカーだ。あの時は苦いだけだったホッピーも今ではすいすいと飲める。
 やっぱりホッピーのある暮らしはいいな。私はくいっとジョッキを傾けた。心地よい苦みが喉に染みわたる。
 父と似て、私もお酒に強くはない。だから飲み方も父と同じで焼酎をひとたらし。
「ねえ、チーちゃん」
 卓也が今度は甘えた声を出した。
「もう、うるさいな。自分で取りに来た方が早いでしょうが」
 私は笑いながらホッピーをもう一口。料理を作りながら飲むホッピーは格別だ。
 今ではこれが私の幸せの味なのだ。

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