店長は閃いた。そして、深い皿にレタスやトマトを盛りつけ始めた。サラダを作っているのだ。これを誠意の印として彼女に提供し、謝罪するのだ。チョコバナナとはいえ女性だ。女性と言えばサラダだ。アボカドサラダだ。彼はアボカドも追加した。更にきゅうり、アスパラも載せた。特製ドレッシングをかけ、サラダは完成した。サラダを出されて喜ばない女はいないのだ。
店長がサラダとホッピーを持って行こうとした時、チョコバナナは自分の食の好みを大声で発表した。
「すっごい、肉食!!」
店長はサラダをゴミ箱に投げつけた。そして、その怒りはジンへと向かった。あいつが、ちゃんと指示を聞いていれば。あいつが、仕事をサボっていなければ。彼の両拳は堅く握られた。
「あ、店長、ジンくん更衣室にいましたよ」梅酒が言った。
「本当か!」
「はい」
店長は走った。そして、トイレの対面にある更衣室兼倉庫に入った。
ジンはそこにいた。ダンボールの中を覗き込んで漁っていた。そして、何かを見つけて「あった」と言った。
「ジン! 仕事サボって何やってんだ!」店長はジンに怒号を浴びせた。
「へ? 何言ってんすか。店長が『今度貼るポスターを探してこい』って言ったんじゃないすか」
「え? そうだっけ?」
「ほら、コレ!」
ジンが店長に見せたポスターには、ホッピーの周りに焼酎、コーラ、白ワイン、梅酒、ジンなどのお酒と、それらを楽しそうに飲む若者数人が描かれている。
そして、キャッチコピーが大きく踊っていた。
『ホッピーに混ぜれば話が盛り上がる!!』