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『1/3の掟』十六夜博士

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「まぁ、どっちだって良いじゃないですか。ホッピー頼んでみましょうよ」
 松岡が場をまとめた。新人なのにできる――、と感心する。
 結局、僕は、普通のホッピー、二宮は黒、松岡は赤を頼んだ。
 しばらくして、ナカとソトに分かれて運ばれてきたホッピーを見て、「えっ!?」、「何だこれ?」と二人が驚く。
 良い反応だな――と、今度は僕がニタニタする。そして、「このジョッキをナカと言って……」と、榎本さんの受け売りを自慢げに話し始めた。二人はフムフムと神妙に聞いている。何だか微妙な優越感。これもホッピーの魅了なのかな――、と悦に入る。
「それで、このナカにソトを加えて……」と言った瞬間、しまった!と思う。
 二人を見ると、ジョッキ一杯にホッピーを注いでいた……。
「あー、言い忘れた!」
 僕は頭を抱えた。二人の、「えっ!?」、「なに!?」という声が聞こえる。
 顔を上げると、目を丸くしている二人に、僕はプッと吹き出してしまった。
 ハハハハハッ……。
 何だか無性に可笑しい。
 一人しばらく笑い続けた。そして、ポカンとしている二人に真面目な顔で宣告した。
「お前たちは、1/3の掟を破っちまった」
 顔を見合わせる二人に、僕は、榎本さんの講釈をそのまま宣った。
 掟と聞いてビビったのか、二人は神妙に聞いている。
「これは、西山さん、榎本さんという偉大な先輩が残した掟だから、今後、ホッピーを飲むときは守るんだぞ。我が社の社訓、いや我が部の部訓だ」
 最後にこう断言して先輩風を吹かせる僕に、「掟って言いすぎっすよね」と二宮が破顔する。松岡も「掟って言うから、大変な間違いをしたかと思って、ビックリしちゃいましたよ」と口を尖らせる。
「まあ、飲もう!今日は6杯飲んで帰るぞー」との宣言に、「はい!」と、元気に松岡が、「はーい」と、だるそうに二宮が応える。
 その後は、いつものように談笑しながら、飲み始めた。
 会話の合間に、ふと、西山さん、榎本さんの顔が浮かぶ。
――40年前もこんな風に、二人は飲んでいたはずだ……。
 そして長い年月が経ち、黒や赤が増え、進化しながら飲み継がれているホッピーと、若者に受け継がれた、僕たちの変わらない『1/3の掟』。変わっていくものと、変わらないものの狭間で僕たちは生きている――。
 掟の継承者の誇りを飲み込むように、ジョッキをグイッと飲み干す。すでに二本目のホッピーに突入している二人を追いかけて、僕は二本目の赤ホッピーを注文した。

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