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『1/3の掟』十六夜博士

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 駅前の通りを小道にそれると、少し前方に黒服の男女が数人見えた。
 僕は目的地に着いたことを確信し、これは現実なんだと息を飲む……。

(西山さん、亡くなったってよ……)
「嘘だろ!」
一昨日、顧客のところへ向かっているとき、同期の中山からスマホで突然の知らせを受けた。青天の霹靂で、思わず街の真ん中で大きな声を出してしまった。
――まだ、70前だろう……。
 天を仰いだ僕の脳裏に、西山さんの愛嬌のある笑顔が浮かんだ。

 西山さんは、かつての僕の上司だった人だ。30年前、大学卒業とともに入社してから、西山さんが定年するまで、約20年もの間、僕の上司だった。優しく、面倒見が良く、そして穏やかな情熱家。僕は仕事の全てを西山さんから学んだと言って良い。情報システムを売る会社のSEとして、西山さんと僕は様々なシステムを開発しては、お客様に納入した。西山さんはSEとしての技術だけでなく、顧客の信頼も厚く、仕事って最後は人なのだと言うことも身をもって教えてくれた。そんな敬愛すべき先輩があっけなく亡くなってしまった……。
 僕と西山さんは、西山さんが定年退職した後もたまに飲みに行っていた。会社の上司なんて、会社だけの関係という人もいるが、西山さんと僕はそうではなかった。会社人である前に人として繋がっていたのだ。でも、最近は部下も多くなり、忙しさにかまけてご無沙汰だった。
――世話になるだけなっておいて……。
 自分の不義理に唇を噛む。

 告別式の受付で、香典を渡し、式場の末席に座る。周りを見回すと、会社関係の人はいないようだった。定年後10年近くも経っていると、昼間から執り行われる告別式には来ないのだろう。さらに最近は盛大に葬式をやることも少なくなった。僕はせめてもの償いという気持ちで、仕事をキャンセルし、有給休暇を取ってやってきた。中山は昨日の通夜に行くと言っていたので、今日はいない。
 前方に目を向けると、西山さんの遺影が笑っている。まだ、西山さんが亡くなった実感が湧かず、ぼんやり眺めていると、遺影に笑顔を返しそうになる。
「よっ!」
 低く抑えた、聞き覚えのある声とともに、肩への衝撃が走った。我に返って、振り向くと、榎本さんの顔があった。

 榎本さんと西山さんは、僕と中山と同じく同期の関係だ。同期というのは、ちょっと特別な関係で、会社でサバイバルするときの仲間、同志であり、ライバルでもある。必ずしも仲良くなる訳ではないが、僕と中山、榎本さんと西山さんは仲の良い同期の典型だった。中山の上司が榎本さんだったので、僕らは4人でよく飲みに行った。

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