メニュー

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ
               国際短編映画祭につながる「ショートフィルムの原案」公募・創作プロジェクト 奇想天外短編映画 BOOK SHORTS

\ フォローしよう! /

  • トップ
  • 受賞一覧
  • 映画化一覧
  • 作家インタビュー
  • 公募中プロジェクト
  • 創作プロジェクト
  • お問い合わせ

『受け継がれるもの』ウダ・タマキ

  • 応募規定
  • 応募要項

 ある年のお盆、庭に小さなプールを出して水遊びをした。木陰に置いたプールで「きゃっきゃ」とはしゃぐ楓と翔太。その側から水鉄砲やジョウロで水をかけてやると、さらに大きな笑い声をあげて喜ぶ。
 ふと、縁側に目をやると、胡座をかいてその様子を眺める親父の姿があった。僕の頭の中に、庭で姉と遊んだ二十数年前の記憶が蘇った。姉に遊び道具を取られて、泣いてばかりいたあの頃。
「こらこら、梓。広樹にも貸してあげなさい、お姉ちゃんだろ」と、親父が縁側から声をかけると「だって!」と、姉は口を尖らせて強い口調で言い返す。親父の負けず嫌いは姉が譲り受けた。

 親父はいつも縁側から僕たちのことを見守っていた。
 僕は冷えたジョッキを持って親父の隣に座った。その後ろ姿は随分と小さくなったものだ。
「ほら」
 ジョッキに焼酎、そしてホッピーを勢いよく注いで差し出す。
「真っ昼間だぞ」
「いいじゃん、たまには」
 僕がジョッキを少し上げると、親父も同じように返した。
 それまで仲良く遊んでいた楓と翔太だったが、突然、楓が翔太の手にしている水鉄砲を取り上げた。
「それ僕の!」と、翔太がベソをかく。
「翔太ばかりズルいでしょ!」
 翔太は今にも泣き出しそうな表情を見せたかと思うと、すぐに大粒の涙が頬を伝った。
「こらこら楓。仲良く遊びなさい」
 親父が優しい口調で楓を叱った。
「だって!」
 楓が頬を膨らます。それでもさすがは子ども同士。すぐに機嫌を直して再び仲良く遊び始めた。
「こうやって見てたんだな」
「ん?」
「僕たちが遊んでいたのを親父はこうやって見てたんだな、と思ってさ」
「ああ。お前も親になってわかるだろ」
 すると、翔太がやって来て不思議そうな顔で「ねえ、じいちゃん、なに飲んでるの?」と尋ねた。
「これはホッピーていう大人の飲み物さ」
 親父が返すと、翔太は目を大きくした。
「え?ハッピー?」
 僕たちは思わず笑って顔を見合わせた。
「ああ、ハッピードリンクて言ってな。幸せになる飲み物さ」
「ふーん」と、翔太は分かったような、分かってないような顔をして首を傾げた。

4/6
前のページ / 次のページ

第1期優秀作品一覧
HOME

■主催 ショートショート実行委員会
■協賛 ホッピービバレッジ株式会社
■企画・運営 株式会社パシフィックボイス
■問合先 メールアドレス info@bookshorts.jp
※お電話でのお問い合わせは受け付けておりません。


1 2 3 4 5 6
Copyright © Pacific Voice Inc. All Rights Reserved.
  • お問い合わせ
  • プライバシーポリシー